「伯母様、こいつらどうするの?」
ロンが灯消しライターをカチッカチッと動かし、テーブルや椅子やショーケースの残骸が散乱する
カフェの明かりを消し、ハーマイオニーが手際よく杖で全てのブラインドを
下ろし回っている間には聞いてみた。
「殺すべきだ」
フェリシティーがちょっと考え込んでいると、横からロンがややあっと口を開いた。
「だめだ。そうすれば僕達がここにいたことがバレる」
その言葉を耳に挟んだハリーは即座に反対した。
「ウィーズリー君・・」
「ロン・・」
「それでいいんですか!?こいつはあなたの師のマッド・アイの仇かもしれないんですよ!」
ロンの納得いかない言葉に、フェリシティーとハーマイオニーは心から切なそうに呟いた。
「記憶を消すだけにしよう。そのほうが安全だ」
ハリーが驚くほど冷静に言った。
「あなたたちでお決めなさい」
彼ら全員の視線を受けたフェリシティーはすっと突き放すように言い放った。
「リーダーは誰なの?」
腕組みしているフェリシティーの眼差しを受けて、ロンはハリーの方を顎でしゃくってみせた。
それから彼は限りない優しさを持って、丁重にハーマイオニーの頬に付着した血糊を拭ってやった。
「オブリビエイト、忘れよ」
結局、四人の中で一番呪文に長けているハーマイオニーが進み出て気絶しているデスイーター達の
記憶を消し去った。
「出来るだけ街から離れなさい。今日みたいなことがまた起こるかもしれないわ」
フェリシティーに送ってもらいながら四人はロンドンの繁華街を歩いていた。
「だけど、ほんとに奴らどうやって・・私達の匂いは十七歳で消滅するはずなのに」
「この世は不可解なことばかりだわ」
は納得いかずに唸った。
「そうだ、忘れてたわ!」
その不穏な空気を打ち破るかのようにハーマイオニーがポンと膝を打って言った。
「ハリーの誕生日パーティ!と私でケーキを用意したの!」
「本当は結婚式の最後にサプライズで出すつもりだったのに・・」
が情けないやら腹立だしいやらで付け加えた。
「ハーマイオニー、、気持ちは嬉しいけど僕達、たった今追っ手に殺されかけたんだよ」
ハリーが感謝の気持ちを述べながらも、現実的な問題を引き出してきて言った。
「そうね、周りをしっかり警戒しなきゃ」
その言葉に女の子達はぎゅっと眉根を寄せ、しゃんとして歩き続けた。
今、五人はグリモールドプレイスのお屋敷の前にいた。
真っ黒なドアをフェリシティーが開けてくれ、うなぎの寝床のような屋敷の中に五人は足を踏み入れた。
ドアが重苦しい音を立てて閉じてしまうと、それに呼応するかのようにパッパッとロビーの照明が点いた。
そして、足元のペルシャ絨毯がぶわっと巻き上がり、砂埃があがると
怒れるダンブルドアの幻が出現して達を捕まえようと迫ってきた。
ハーマイオニーが「キャーッ!」と悲鳴を上げ、は目を真ん丸く見開いてハリーの服の袖を掴んだ。
「あれは何だよ?」
ロンが突然の恐怖から立ち直りつつ尋ねた。
「今は亡き師の最後の仕掛けよ。裏切り者の侵入に備えて」
フェリシティーが何事もなかったのようにさらりと言ってのけた。