シルバースター乗馬クラブにほうほうのていで五人の男たちを連れ帰った

とサヤは途方に暮れていた。

リョウマやヒュウガなどは悲しみがあまりに深いため、近くにいたボックや

を抱きしめて泣きじゃくる始末である。

「ちょっとヒュウガってば・・こんな時に紛らわしいことしないで!」

サヤの噛み付くような視線がたちまち二人を捕らえる。

は背筋が寒くなり、慌ててヒュウガを引き離そうとするが、

彼はたよりなげにますます彼女にしがみつくだけだった。



(何よ・・あんなにくっついて!)

サヤはやってらんないとふんっと背を向けると、飛びっきりの笑顔でヒカルに砂糖衣がたっぷりかけられた

ドーナツを差し出した。

「美味い・・けど何か悲しい〜!!」

食いしん坊のヒカルはこんな時でも迷わずにドーナツに手を伸ばしてほおばったが、

それさえも彼の深い悲しみを和らげることは出来なかった。

「この方法もだめか・・」

サヤはがっくりと肩を落とした。

〜!!今まできつく叱って悪かった、許してくれ!な?」

「ハヤテ、こんな時に謝ってもらっても・・それにしっかりしなさいよ!!」

これまでで一番頼りないヒュウガの手から逃れ、ハヤテの脇をすり抜けようとした

彼に腕をつかまれて哀願されてしまった。

ただでさえいらいらしていた彼女は、ハヤテの頬に勢いよく平手打ちを食らわして正気に戻そうとした。

、そんなに俺のこと嫌いか〜?」

だが、力の抜けたようなうめき声が帰ってくるだけで彼は全く役に立たなかった。

「いったいどうすれば・・」

「えいっ、いい加減にふざけてないで起きなさいってば!!」

サヤは途方に暮れ、はまだ懸命に平手打ちを食らわしていた。

「サヤ、。二人で協力して常盤の森へ行ってくれ」

「そこにある木の実は悲しみを癒す効果がある。僅かな間だけでもリョウマ達を正気に戻せるかもしれない」

見かねたモークがここで口を開いた。



「分かった!行くよ、!」

「え、あ・・分かった!」

サヤはモークの言葉に力強くうなずくと、これまでの反目を忘れて

の腕を引っ張って駆け出した。

乗馬クラブを抜け、増水した川にかけられた橋の上を渡っていると、早速、ヤートットの放ったバズーカーに襲われた。

「奴ら、こんな時に!!」

「突っ切って!!」

は地団太を踏み、サヤは相棒に短く命じると、ヤートットの腕を押さえ、相手の手首を捻って投げ飛ばしていた。

「はっ!」

「やっ!」

はあまりにも敵の数が多すぎるので、いつもしょっている皮袋の刀嚢(とうのう)からさっと鴛鴦斧を引き抜いた。

(この悪天候といい、状況は私達に酷く不利だ・・)

は鴛鴦斧の柄の部分をどかっと水兵のみぞおちに当てながら思った。

すでにサヤが目と鼻の先で三人の水兵を蹴ったり、投げ飛ばしたりしているのでお得意の鴛鴦斧

を投げての遠距離攻撃が出来ないのだ。

下手をすればサヤの後頭部にでも直撃するかもしれないからだ。

「あっ・・ううっ!」

サヤが悲鳴を上げて、横から乱入した水兵に抱きかかえられるような感じで

増水した川へと転落した。

「サヤ!」

たちまち、ずぶぬれで水に足を取られている彼女を追って水兵達が襲いかかる。

「待てっ!」

は唇をかみ締め、鴛鴦斧片手に覚悟を決めて橋から飛び降りると、サヤを取り囲んだ水兵を追って

水を蹴散らして走っていった。















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