「ザカリアス・スミスをリー・ジョーダンの後釜に座らせたの?」
「だって、彼が応募者の中で一番上手だって、マグゴナガル先生が言ったの。私はルーナのほうが一緒にやるにはとてもいいパートナー
だと思ったけどね・・。」
クィディッチと解説者の選抜は午前中を丸々つぶして、終了した。
ハリーと
は声の出しすぎで、ぐったりしていたが、ロン、ジニー、ケィティ・ベルなどのなじみのメンバーが
見事選抜に勝ち残ったことを喜んでいた。
そんなこんなで十月半ば、
達の学期最初のホグズミード行きがやって来た。
「ちょっと、まだあのイカレタ教科書にしがみついてるの!?」
大広間の朝食の席ではあきれかえって言った。
彼女が言っているのは、明け方、ハリーがプリンスが教科書に落書きした呪文をロンに試した時のことだった。
レビコーパスという身体浮遊の呪文だが、その呪文はデス・イーター達がクィディッチ・ワールドカップ
の時にマグルを逆さづりにした時と同じだったのを髣髴させた。
「
、君、あの教科書に神経質になりすぎだぜ」
ロンがのんびりとブラック・プティングをほお張りながらたしなめた。
「なりすぎだぜじゃありません!私も彼女と同意見よ!」
ハーマイオニーがピッチャーにはいっていた生クリームを、コーヒーに注ぎながらぴしゃりと言った。
「ハリーが使った呪文は単なるジョークの域に入る。二人とも、それだけだよ!」
ロンはそう言い訳した。
「踝をつかんで人を逆さづりにさせる呪文が?」
ハーマイオニーがかみついた。
「そんなことを考えるなんてプリンスって人、まともな思考の人じゃないわね」
がひそひそといきり立っているハーマイオニーに言った。
「君たちは王子様が嫌いだから、最悪の結論に飛びつくんだよ」
ハリーがイライラと反論した。
その後、最近お決まりの「プリンス議論」はうやむやのうちに打ち切られ、
は皆のブスッとした気分をかえる為に別の話題を持ち出した。
「ホグズミードへ行く途中でミス・キムに会わなくちゃ。あの人に懐中時計をちょっと細工してもらってたの」
「伯母さんもいるかな?いたらショーロンーポーをおごってもらおうっと。三人ともお腹すいたでしょ?」
「ペコペコだよ」
ロンが食べ物のこととなると目を輝かせた。
「はい、お約束のものよ」
「ありがとう」
ディアヌ・レコード店の良く磨きこまれた扉を押すと、店長のミス・キムが小さなあぶみのところにクリスタルの十字架がついている時計
を渡してくれた。
「これ、あのツインスターペンダントじゃない?」
「うん、前の銀の鎖が切れたからペンダントの金鎖を利用してこっちにつけかえてもらったの」
ハリーが鋭い眼で、ちっちゃな金鎖の先に双子星がつらなったペンダントと連結された
ロイヤルブルーの懐中時計を観察して言った。
「このペンダントをくれた人、誰だか思い出せないのよね・・」
は物思いに耽りながら言った。
「あら!そのペンダントを下さったのはあなたのミナ伯母様じゃない。
前、そう私に言ったわ!」
ハーマイオニーが古い記憶をたぐりよせながら言った。
「ううん、なぜだか違う気がするの・・ミナ伯母様じゃないような・・」
「今日はフェリシティー婦人はいらっしゃらないんですか?」
ハリーは大声で
の瞑想をかき消すように言った。
彼にはペンダントの贈り主が誰だか、わかっていた。
ルーピンだ。彼しかいない。
今まではペンダントの贈り主がハーマイオニーから
聞きかじったようにミナ伯母さんだと信じ込んでしまったが、彼女がどこに行くにも
肌身離さずこれを持ち歩いていること、このペンダントを手に取るとき、
こころなしか頬が赤く染まることから嘘を見破ったのだった。
「あいにくですが、フェリシティーさんはご多忙の身でいらっしゃいます。ごめんなさいね」
ミス・キムはせっかく尋ねてきてくれたのだからと、ショーロンポーなるものをおごってくれ、四人はレコード店をあとにした。
「ショーロンポー美味しかったよな!」
小道をくねくねと進みながらロンはほくほくしていた。
ハーマイオニーがほほえましそうに「そうね」と答えていた。
「伯母さん、最近、あの店に帰ってないみたい。大丈夫かな?」
はハリーに不安そうに身をもたせかけながら呟いた。
「ダンブルドアがついてるから危険な目にあってるってことは絶対にないよ」
彼は安心させるように言った。
「それにトンクスもいるしね!」
は元気良く言った。
「あ、この間の伯母さんの手紙にね、マンダンガス・フレッチャーが酒びたりだって書いてたわ。
ジェーン・ブラックが死んでからずっとそうなの」
「マンダンガスはジェーンを気に入ってたのさ」
ハリーが言った。
「伯母さんとトンクスが手を焼いてるらしいわ。あの馬鹿ときたら焼けたものか、釘付けにされている物以外、
何でも盗む癖が酷くなったって」
はそこでふうっとため息をついた。