「今、何時?」

は大理石の床に丁寧に並べられた、九本の魔法の鍼を見つめていた。

ハリーが腕時計を見て現在の時刻を教えてやると、彼女はほっとしてその中の一本を取った。

「真夜中を過ぎてなくてよかったわ。そうすると体内に陰の気が満ちてきて、鍼を打てないのよ」

それから、はフェリシティー伯母に伝授してもらったことを反芻し、慎重に経穴

(「気と血」のエネルギーの通り道である経絡上に点在し、その経絡をつなぐ点)を

選んでダンブルドアの皮膚に一本ずつ挿入していった。


全ての経穴に鍼をさしてしまうまで、ひどく長い時間がかかるように思われた。


ハリーはごくりと生唾を飲んで、癒者見習いの彼女の腕前を見守った。


「終わった・・」


冷たい汗が脇からどっと流れると同時に、はずっと張り詰めていた神経が緩んでいくのを感じた。

彼女はふらふらと後ろに控えていたハリーの腕の中に崩れた。

それから重苦しいほどの時間が流れた。

とハリーは一心に祈った。

どうかダンブルドア校長が助かりますようにと。








突如、さきほどまで、瀕死の状態で横たわっていたダンブルドアがうっすらと目を開けた。



「ああ・・よかった!助かったんだわ」


が両手をもみしぼり、歓喜の声をあげた。


「さっきの治療で毒が抜けてきたんだ・・」


ハリーも安堵の表情をみせた。


「ダンブルドア先生!大丈夫ですか?」

の目には涙が光っていた。

ダンブルドアは頭をもたげて、かすかに頷いた。

「ハリー・・水・・をおくれ・・」

「はい!」


ハリーが弾かれたように立ち上がり、水盆に落とした金のゴブレットに水をくみにいっている間

は、ダンブルドアの脈をとって、現在の体内の状態を確認していた。


「君を・・連れて・・来たのは正解じゃった・・」

ダンブルドアは疲れ果てて、頭が回らない状態だったが、それでも途切れ途切れに感謝の言葉を述べた。

「君の治療は・・実に見事じゃった・・おかげでまたおしゃべりすることが出来たからのう・・」

「先生、水をお持ちしました」

ようやくゴブレットに水を満たしたハリーが帰ってきた。

は彼からゴブレットを受け取り、ダンブルドアの口にゆっくりと注ぎ込んでやった。





ほっとしたのも束の間、「!」とハリーが金切り声をあげた。


「ハリー!」


嫌な予感がして後ろを振り返った彼女は、いまだかつて覚えたことのない恐怖で背筋が凍った。


彼が先ほど水をくみにいった湖から、無数の青白い手が突き出して、岩の前に立っていたハリーを

水の中へと引きずり込もうとしていた。



「助けて!」


ハリーは必死に叫んで、に助けを求めた。


はひとっとびに走って、岩場に追いつきハリーの両手をつかんで引っ張り、こちらに引き戻そうとした。


「あっ・・あっ・・やめ・・て」


だが、彼女の細い腕はあっという間にあとからあとからわいてきた死人の手に

からめとられ、とうとう身動きがとれなくなってしまった。


「絞め殺してやる・・」


湖の中からどこからともなく恐ろしい声がし、それを合図にハリー、は伸びてきたいくつもの

手に首を締め上げられてしまった。


二人は白目を向き、巻きつけられた白い手を振りほどこうと苦しそうにもがき始めた。


その時だ。


ほの暗い闇の底から、オレンジ色の炎が死人たちめがけて飛んできて、真っ直ぐにつきあたった。



二人は途端に勢いよく、地面に振り落とされた。



「早くこちらに来なさい」


ダンブルドアは「呼び寄せ呪文」で苦しそうに咳き込んでいる二人を引き寄せると

湖に浮かんでいた小船の中へ落とした。


それから、自らの周りをオレンジ色の炎の輪で取り囲んで、死人どもが近寄らないように護衛すると

小船に乗り込んだ。



「先生」

ハリーはげほげほと苦しそうに咳き込みながら、言った。


「先生・・僕、忘れていました・・炎のことを――悪霊に襲われてパニックに陥って――」

ハリーは申し訳なそうに謝った。

「当然のことじゃ・・、君も・・大丈夫かな?」

毒で弱りきった声を振り絞るようにして、ダンブルドアは言った。

「平気です・・ちょっと油断してしまったけど」

首をおさえて、彼女はまだ苦しそうにせきこんでいた。









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