リーター・スキーターのうんざりするようなインタビューからやっとのことで解放された二人は

今、杖調べの儀式の真っ只中にいた。

「二十四センチ・・・しなりにくい・・紫檀・・芯には・・おお・・なんと!」

杖調べを行っているのはダイアゴン横丁のオリバンダー老人だ。

「ヴィーラの髪の毛でーす、わたーしのおばーさまのものでーす。」

フラーは得意そうに言った。


「やっぱりフラーにはヴィーラが混じってるんだ」

ハリーは を突っついて言った。

「ロンに教えたらびっくりするでしょうよーーーあーー今は彼、口聞いてくれないんだってね」

彼女は少し残念そうに言った。


「次、ハリー・ポッターさん」

フラーの杖調べが終わると、オリバンダー老人が呼んだ。

「そうそうそう、よーく覚えておる」

老人は他の杖よりも長い時間をかけて、念入りに調べた。

最後に杖からワインをほとばしらせ、「OK、問題ナシじゃ」というと老人は杖をハリーに返した。


「最後は、 さん」


彼女は少し緊張しながら、(周りの人間がじーっと自分を見つめているので)老人に杖を渡した。

「おお、この杖は!」

オリバンダー老人は感激して言った。

「二十五センチ――乳白色、ヒマラヤ杉、この杉はかなり珍しい代物でな。何しろ一定箇所にしか植生せんのじゃ。

 そして、末端にはペガサスのたてがみが入っておる。」


「では」

オリバンダーハリーの杖と同じぐらい長い時間をかけて、 の杖を調べた。

最後に老人は杖を軽く叩き、先端から幾つもキラキラ光る、虹色の雪の結晶を出して見せた。



その後、日刊預言者新聞のカメラマンが来て、新聞用に記念写真を撮るといって代表選手を並べさせた。



カメラマンはフラーと を正面に持っていきたくて仕方なかったが、その度にリータ・スキータが

しゃしゃりでて、ハリーをより目立つ場所へと引っ張っていった。


クラムはこそこそと皆の後ろに隠れてしまうし、撮影にはかなりの時間を要する始末。

全員が解放されたのは集合写真とは別に、スキーター女史が個人写真を撮ると言ったのでその後だった。



とハリーが夕食の席につき、寮に帰ると

ロンが談話室で待ち構えていて、ぶっきらぼうに「カラスがきてる」

と言い、両手で抱えていた物体を二人によこした。


ロンはフンと顔を背け、早足で二人の側を通り抜け男子寮へと帰ってしまった。


ハリーはあとを追いかけようと思ったが、 に「やめときなさい」と止められた。

彼はロンを今にもぶん殴りそうな勢いだったからだ。

ハリーはカラスの足に括りつけられていた手紙をほどき、広げた。


シリウスからだった。

リーマスから返事はまだ来ない―何やってるんだろう?ヘドウィグ、いっそのこと躊躇している彼の腕に噛み付いてせっついて

やればいいのに!


はもどかしい気持ちにイライラし、そのまま女子寮へ帰ろうとした。

「ちょっと待って! 。」

ハリーが慌てて彼女の腕をつかんで引き戻した。


「シリウスが、十一月二十二日、午前1時にグリフィンドール寮の暖炉の側で僕と、君と二人で

 待つように出来るかって。ゴブレットの件で話したいんだってさ」


「え?私も?」

は驚いて聞き返した。

「うん・・君もだよほら、ここにそう書いてある」

ハリーは手紙を彼女に見せた。


「あーところでさ、ルーピン先生から手紙来た??」

ハリーはちょっと気になっていたことを聞いてみた。

「え、あーまだ・・だけど・・どうしたんだろうね?ルーピン先生。」

は一番、今聞かれたくないことを聞かれて、表情が曇った。

「ねえ、先生となんかあったの?前も聞いたけど・・僕、ずっと気になってて・・」

ハリーは鼻の頭をかきながら、聞いた。

「な、なんでハリーがそ、そんなこと気にするのよ!せ、先生き、きっと忙しいのよ!

 ごめん、それ以上聞かないで!」

は涙腺がいっきに緩んできて、ハリーに見られたくないのでさっと顔を背け女子寮への階段を駆け上ってしまった。




シリウスの手紙が来てから、ハリー、

十一月二十二日の晩、誰かがいつまでも談話室に残っていたらどうやって締め出すか、

二人で長時間かけて計画を練り上げた。

最悪の場合、「糞爆弾」か「眠り粉」を投下するつもりだと言う結論に達した。


それから10日目、リータ・スキーターの三校対抗試合の記事が出た。


「見てよこれ!」

が実家から送られてきた新聞をハリーの前に突き出した。

彼女はかんかんになって談話室の椅子にドサッと腰を下ろした。


「あの女―デマばっかり書いて!だから嫌だったのよ!あの女のインタビュー受けるのは!!」

は憎憎しげに叫んだ。



リータ・スキーターの記事は試合のことより、ハリーと の人生をさんざん脚色したものだった。

一面の大部分が二人の写真で埋まり、記事は二面、六面、七面まで続き、すべて二人のことで

ボーバートンとダームストラングの選手の名前は最後の一行に詰め込まれ、セドリックは名前さえ出てなかった。

リーター・スキーターは二人が一度も言った覚えもなく、ましてや、あの空き部屋で言ったはずもないことばかりを

でっちあげていた。


ハリーはついにホグワーツで愛を見つけた。

親友のコリン・クリ―ビーによるとお相手は何と同じ三大魔法学校試合代表の

ハーマイオニ―・グレンジャーなる人物だと言う。彼はこの二人と離れていることはめったに

ないらしい。ハーマイオニ―・グレンジャーはマグル生まれの飛び切り可愛い生徒でハリーと同じく学校の優等生の一人である。

は魔法族であの有名なレディ・ブラド博士の姪であり、大変、美人である・・・・etc


その他、 の伯母の根も葉もない下らない噂や、ハリーの両親のことについてのことが延々と

何ページにも渡って書かれていた。


この記事のせいでハリー、ハーマイオニ―、 は針のむしろだった。

特に、スリザリン生は三人とすれ違う度に記事のことを持ち出して冷やかした。

「飛び切り可愛い?あの子が? はともかくグレンジャーは何と比べて判断したのかしら?

あ、分かったぁ〜シマリス? だってただの傲慢な女じゃない。」

リータの記事が載ってからハーマイオニ―、 が廊下でパンジーとすれ違った時、彼女は甲高い声ではやし立てた。


は一瞬パンジーの頬を思いっきりひっぱたいてやりたい衝動にかられたが、

ハーマイオニ―の態度は感服するものだった。


彼女はパンジーとその取り巻きがからかう中をつーんとすました顔で何も聞こえなかったようにして

通り過ぎた。


「よくあんなこと出来るわね・・私だったら一発ぶん殴らなきゃ気が済まないけど」


だいぶんたってから、 が感心したように言った。


「それこそ相手の思うつぼよ。ほっとくのよ!徹底無視!噂なんか気にしないの!いいわね!」

ハーマイオニ―は にきっぱりと言い切った。


この記事が載ってからというもの、ロンは前以上にハリー、 がやっぱり目立つのを楽しんでいるんだと確信して、

一切目もあわせず、口もきかなくなった。


そして日々は過ぎ、シリウスとの約束の日――――十一月二十二日が来た。

ハーマイオニ―、ハリーは気晴らしのためホグズミードに出かけている。

も行きたかったが、酷い頭痛がして当日、寝室にこもってしまった。

熱も少しあるようだ。額が火照る。まあ、いいか――今日、ほとんどの生徒はホグズミードに出かけている。

皆、しばらく帰ってこないだろうし、少し休んでればすぐ直る。医務室に行くまでのことはない。

彼女はそう楽天的に考え、痛む頭を抑えながらベットにどさっと横たわった。


窓の外ではちらちらと今年初めての粉雪がちらついていた。















 

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