イブの翌日はみんな朝寝坊した。

ハーマイオニ―と は、一緒のベッドで仲良くお休み中だ。

栗毛と黒髪が混ざり合い、規則正しい寝息が聞こえてくる。

ハーマイオニ―がようやくぱちりと目を覚ました。

彼女はクスっと笑った。

友人は横で眠り姫よろしく幸せそうな顔で眠っている。

「リーマス、行かないで・・」

ハーマイオニ―がベッドから起き上がろうとすると、 にパジャマの袖をつかまれベッドに戻された。

「リーマス・・」

(い、今、な、なにか聞こえたかしら?)

(き、気のせいよね・・)

ハーマイオニ―は口を半開きにしたまま、そうっと の手を服から離した。

「あ〜、暖かい、リーマス・・」


(き、聞き違いなんかじゃないわ!!ル、ルーピン先生のことを確かにリーマスって呼んだ!!)

(え、でも、リ、リーマスってほ、他の人の名前かもしれないし)

ハーマイオニ―の思考回路は電撃をくらったようになった。


「おはよう、ハ―マイオニ―」


その数分後、寝ぼけ眼で が目を覚まし大きく伸びをした。


「お、おは・・よう 。」

ハーマイオニ―はハッと我に返り、無理に笑顔を作って挨拶した。

「どうしたの、そんなにひきつって?」

は彼女の栗毛に手をかけ、心配そうに顔を覗き込んだ。

「な、な、なんでもないわ。なんでもない!あ、それよりお茶くれる?眠気覚ましに」

ハーマイオニ―は慌ててベッドから飛び降り、パジャマを着替え始めた。


はナイトテーブルに置かれてあった簡易式のティー・セットを引き寄せると杖で軽く、ポットをたたき

あっという間にお湯を沸騰させた。

休日の朝、二人は一緒に のティー・セットでお茶を飲むのが習慣となっている。


ハーマイオニ―はお茶を一杯口に含んだが、いつもの香りと甘さが感じられない。

湯気の立つティー・カップに口をつけたまま、驚いた表情で、優雅にお茶を飲む彼女を見つめた。

「飲まないの?」

「え?飲むわ、もちろん」

ハーマイオニ―はひきつった笑顔でなんとか紅茶を飲み終え、カップを に渡した。



「おはよう」

「おはよう、ハーマイオニ―、




階下に下りていくと誰もいない談話室でハリーとロンが待っていた。



ロンの頭上ではピッグウィジョンが嬉しそうに鳴き、パタパタと飛び回っている。


「ところでさ―」


「この卵開けてみた?」


ハーマイオニ―がロンに「話があるの」と言い談話室の隅に引っ張っていったのを見計らってハリーは に話しかけた。


「まだだけど開けたの?中に何か入ってた?」

は彼の持つ黄金の卵を眺めながら聞いた。

「開けたよ。中からわけのわからない・・うん、そうだな歌声が聞こえてきた」

「何なの?わけのわからない歌声って?」


「鋸三十丁ものの歌声さ。聞くに堪えない。」

ハリーはうえっと顔をしかめて言った。

「そ、そんなに恐ろしいものが入ってたの?」

「耳を貸してー実はさ。セドリックがこんなことを教えてくれたんだ。」

ハリーは の耳に口をあて、ヒソヒソと事のなりゆきをしゃべった。

「風呂に入れ?それが彼の答えなの?」

ロンとハーマイオニ―が向こうの隅でまだしゃべっている。

「卵を持っていって、お湯の中でじっくりと考えろ―どういうことだろう?」

「ねえ、こんな大ヒント、私に何で教えてくれるの?」

が不思議そうに聞いた。

「ハグリッドが第一の課題の前、ほら、シリウスが来た晩さ。あの時、僕にドラゴンを見せてくれたんだ


 ほんとうは君にも見せてあげたかったけどー は熱出して寝込んでただろ?でも君は初対面のドラゴンを

 
 すごい方法でまんまと出し抜いた。僕は が一番不利な身でとてもよく頑張ったって尊敬してる。


 だから、今度は不利にならないようこの事を是非、君に教えたかったんだ。」


彼は恥ずかしそうに笑った。


「そうだったんだ。どうもありがとう。ねえ、このヒント何を意味してるのかよく分からないけど

 実行する価値おおありよ!お互いに頑張りましょう!本当にありがとう!」



は感謝の気持ち一杯で、ハリーをぐっと抱きしめた。




「だからさ、僕、決定的なものを三年の時に見ちゃったんだ」


「それまでは二人のことなんて全然気づかなかった。」


「本当にに?二回も見たの?」


「ああ、一回目は偶然、二回目は用事があってそこを通りかかったら・・・」


「あ〜今思い出した。 は二年の休暇が終わった時、こっちへ帰って来た時・・・夢見るような表情をしてた」




ロンとハーマイオニ―は額を寄せ合って夢中で のことについて喋っていた。


「お二人さん、何話してるの?」

が頭に?マークをつけてひょいっと覗き込んだ。

「な、なんでもないの!!」

二人は慌てて会話を打ち切った。












そうこうしているうちに時は流れ、第二の課題の日が訪れた。


「何してるのよ!遅いなあ〜」

はいらいらしながら、湖で他の選手とともにじりじりと姿を表さぬハリーを待っている。

、ハリーはどうしたの?」

隣りにいたセドリック・ディゴリ―が心配そうに話しかけてきた。

「彼は絶対にくるわ。逃げ出したりしないもの!」

彼女はずっと離れたところでハリーはもう来ないだろうと話している、マクシームとカルカロフを睨みつけながら答えた。






「と、到着しました!」ばたばたとこちらに駆けて来る足音がした。


「ハリー!!」


は喜んで手を振った。


彼は湖のほとりで急停止した。


「大丈夫かね?」

ハリーをクラムの隣りに連れていきながら、バグマンは聞いた。

「ええ、大丈夫です。遅れてすみません。」

彼は胸をさすり、喘ぎながら言った。


クラムは水泳パンツをはき、すでに杖を構えている。

は羽織っていた黒いマントを脱いだ。


「私が預かろう」

「ありがとうございます」


彼女はバグマンに黒いマントを預けた。


今日の彼女はその下に黒のピッチリした全身防水性の潜水用スーツを着用していた。

それは の体のラインをはっきりと浮かび上がらせている。


「では、第二の課題開始です!全選手、位置に着いてーよ〜い」



ホイッスルが冷たく静かに鳴り響いた。


選手がいっせいに湖に入っていった。


ハリーは鰓昆布をひとつかみ口に押し入れ、浅瀬を歩行している。

他の選手も似たようなものだ。


その時、視界から の姿が消えた。


彼女はなんと、他の選手よりいち早く、鼻をつまみ、冷たい湖の中へと潜ったのだ。


実は はかなり潜水術に優れていた。(飛行術は全くもってダメだったが)


彼女はガブリと水を飲み、すいすいと水中を人魚のごとく泳いでいる。


しかもその速度は他選手に比べ、速い。


ハリーがようやく水に潜り、先方に の姿を発見した。

黒い髪が水中でゆらゆらと揺れ、彼女はさらに深く、深く潜っていった。


全身に塗ったえら呼吸クリ―ムのおかげで、しっかりと息が出来る。


水草から二三匹、水魔が飛び出してきた。

彼女の足を掴もうと皆、手を伸ばしてくる。


「邪魔をするな!!」


は水魔から素早く身をよじって逃れ、追いかけてきた奴の顔面を強烈なキックで蹴り飛ばした。


(しつこく追いかけてきた最後の一匹は武装解除術でぶっ飛ばしたが)


気絶した水魔が自分の目の前を白目をむいて、ゆらゆらと流されていった。




その後も水魔が何匹か彼女目掛けて襲いかかってきたが、全て蹴り飛ばすか、武装解除術を駆使し、

振り切った。


水が心地よく彼女の全身を撫でている。



上を見上げれば、太陽の光が水中に差し込んでいる。



突然、水中に喪に覆われた荒削りな住居の群れが現れた。


何人もの水中人が槍を片手に構えている。

すぐ側にチョウ・チャン、ロン、ハーマイオニ―、フラーの妹、そしてジニ―・ウィ―ズリ―が岩に縛り付けられている。


「槍を貸してくれない?」


は半ば水中人が自分を襲うのかと覚悟を決めて、杖を突きつけたまま言った。


「ダメだ」


「あっそうなの!」

はあっさりと水中人に背を背け、自分の人質、ジニ―・ウィ―ズリ―のもとへ向かった。


「さあ、この呪文は水中で使えるかしら・・・。」

彼女は杖を振り上げ、水草の強靭そうなロープを眺めて呟いた。



杖の先から火花が飛び散り、固い縄目に直撃した。


「よし、だいぶ緩んできたみたい」



彼女は慎重に縄目をぐっと引っ張り、ジニ―を火傷させないように見事、縄目を焼ききった。



はジニ―を抱き上げ、その場から立ち去ろうとした。


彼女は目を疑った。

向こうからサメの頭に水泳パンツをはいた胴体がやってくる。

「クラム!」


はびっくりしてジニ―を抱きしめた。


サメ男は真っ直ぐにハーマイオニ―の辺りに来て、縄に噛み付き、噛み切り始めた。


しかし、その歯は非常に不便で一つ間違うと、ハーマイオニ―を真っ二つに噛み切ってしまう。


「ちょっと!」


その様子を見て、明らかに危険を察した はクラムの肩を叩いた。


「そのままだとハーマイオニ―を噛み切る可能性があるわ―こっちのほうが安全よ」


はハーマイオニ―を縛り付けている縄目を引っ張り、杖を構え、先ほどと同じ火花を飛ばした。


「じゃあね」


はジニ―を抱きかかえ、幾分か速度は減速したが、水を必死で掻き、水面目指して急速浮上していった。






ぜいぜい喘ぎながら、 は必死にジニ―の重みに耐え、水を掻いた。太陽の光はすぐそこだ。





は思いっきり待ち望んだ、新鮮な空気を肺一杯に吸い込んだ。


「なんと最短時間です!ホグワーツ、 選手がTOPで戻って参りました!!」


観衆は総立ちになりピイピイと口笛を吹いたり、拍手喝采で彼女を出迎えた。


は優秀ね。さすがあなたの生徒だわ。ミネルバ」

「あなたの姪ッ子でもあるでしょう。ミナ」

スタンドの教職員、来賓席ではマグゴナガル、ブラド女伯爵が目を細めて盛んに拍手を送っている。


は濡れた髪をかきあげ、バグマンからマントを受け取った。


「おおっと、二着、ビクトール・クラム君、三着、セドリック・ディゴリ―君到着いたしました!!」




救護席で がマダム・ポンフリーから暖かい飲み物と毛布に包まってると

ビショビショに濡れたセドリック・ディゴリ―とクラムがやってきた。


「あなたがたも体を拭いて毛布にくるまって」


マダム・ポンフリーが二人にタオルを渡すのが見えた。



ジニー、ハーマイオニ―、チョウはその横でマダムが介抱している。


「たいしたヴォンだよ は・・・ヴぉクを助けてタイムロスしたのに・・TOPになった」


クラムが彼女の隣りに座り、ブルガリア訛りの英語で初めて話しかけてきた。


「また負けちゃったな〜でも、次こそは絶対に君を負かしてみせるよ!」


セドリックが彼女の右隣に腰掛け、とびっきりの笑顔で微笑んだ。




やがて、制限時間を大幅に遅れてハリーがロンとフラーの妹を連れて戻ってきた。


「遅いじゃないの〜」


がマントをしっかりと巻きつけ彼の方へ走っていった。


ロンがピュ―ッと水を吐き、目を覚ました。

「やあ、 。先に戻ってたのかい。」


何にも知らないロンはのんきに言った。


救護テントにハリー、ロンが入り、マダムから毛布を受け取った頃、人質全員が次々と目を覚ました。



「よくやったわ、ハリー、 !!」


ハーマイオニ―が二人に飛びついてきた。


「ガブリエル!!あああ、もうダメかと、ダメかと思ったわ・・・」


すぐ側ではフラーが妹を抱きしめて、泣いていた。


「髪にゲンゴロウがついてるよ・・ハーム・オウン・ニニー」


いつのまにかクラムが彼女の隣に来て、ハーマイオニ―の関心を取り戻そうとしていた。


「でも、ハリー、制限時間をずいぶんオーバーしたじゃない。私達を見つけるのに

 そんなに長くかかったの?」


ハーマイオニ―はうるさそうに髪からゲンゴロウを払いのけ、言った。


「そうよ・・何してたの?」

までもが髪をギュッとしぼって水滴を落としながら聞いてきた。

「いや・・それは・・」


彼は今、自分の馬鹿さ加減に嫌気が差している最中だった。

、クラム、セドリックは他の人質のことを心配して、時間を無駄にしなかった。

水中人の歌を真に受けたりしなかった。



「さあ、ただ今、審査結果が出ました。水中人の女長マーカスが湖底で何があったのかを仔細に話してくれました。

 得点は五十点満点で次の通り・・・」


ルード・バグマンの拡声された声がスタンドに響いた。


「ミス・デラクール泡頭呪文を使いましたが、水魔に襲われ、ゴールにたどり着けず、人質を取り戻すことはかないませんでした。

 二十五点」


「セドリック・ディゴリ―君、こちらも泡頭呪文を使い、三番目に人質を取り戻して帰ってきました

 制限時間の一時間を一分オーバー四十点」


「ビクトール・クラム君ー変身術が中途半端でしたが、人質を連れ戻したのは二番目です

 四十七点」


。最初に人質を連れて、鰓呼吸クリームの効果とその最速な見事な泳ぎっぷりで

 制限時間内に戻ってきました。ただし、少々荒々しい方法で水魔撃退のことで

 四十九点」


「ガッデーム!!(くやし〜〜)」

が叫んだ。


「ハリー・ポッター君。鰓昆布の効果は大きい。戻ってきたのは最後ですし―一時間の制限時間を大きくオーバーしていました。

 ほとんどの審査員は彼の道徳的な行為に対して五十点満点に値するという意見です。

 が、ポッター君の得点は四十五点です!!」


「あ〜〜あ〜」


彼はがっくりとうなだれた。


だが、タイムオーバーの割にこの得点で、セドリックと同点三位になった。


「ドンマイ、ドンマイ、次で逆転を狙え!!」


ロンがバシッとハリーの肩を叩き、慰めた。


「はぁ〜やっぱ君は凄いよ。 。冷静にあの卵の謎を解き明かしたんだもの」


彼はうなだれて、だが、にこやかに に拍手を送った。


「あなーた、私の妹を助けてくれました〜」

「それーにあなーたもですーえるぷしてくれました。」


フラーが近づいてきてロン、ハリーの頬に代わる代わるキスした。


「何よ、あれ!あんなに鼻の下のばして!」


「まあまあ、落ち着きなさいよ」


少し離れたところでプンプン怒っているハーマイオニ―を がなだめていた。


、私、運ぶの重くなかった??」


そのとき、赤毛のジニ―がおずおずと の元へ近づいてきた。


「そんなことないよ」


彼女は優しく言った。


「一位、あなたが一位だわ!!凄いわ、やっぱり は」


ジニーはひどく感激して目の前の防水スーツ着用の を見つめた。








 

 



























 

 

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