新たな事実のショックで、ろくすっぽ口が聞けない
に変わってフェリシティー・
婦人は事件の経緯を
長々と微に入り、細に入り語ってくれた。
「あたくし、実をいうと事件の前日、何か嫌な予感がしたものだからあの二人のあとをこっそり尾行していたの。」
話の冒頭にフェリシティーは言った。
「まんまと尾行されてたなんて知ったら、さぞかしあの二人はお怒りになるでしょうね。」
フェリシティーは皮肉っぽい笑みを浮かべた。
「でも当日はそれがよかったのね。私はアーサーがいた建物の廊下の反対側の奥まった部分に身を潜めていたの。
アーサーは居眠りしてたわ。ミナだけが起きてた。そこから様子をうかがっていたら大きな蛇がアーサーに
襲いかかったの。私が気づいて駆けつけたけど間に合わなかったわ。アーサーは大出血で倒れてた。
ミナのほうは男に後からクロロフォルムを染み込ませたハンカチをかがされてた。
やっと現場に到着した私はーー蛇の右目を発煙筒で焼ききった。蛇はのたうちまわってそれからとぐろを巻いて、逃げたの。そしたらその間に覆面をした男がミナを担いで
逃げようと反対方向のエレベーター・ホールに疾駆していくところだったわ。
私は必死に走って追いつき、男に飛びかかってもみ合いになったの。男が首を絞めようとしたので、手に持った
鞄で男の顔を思い切り殴りつけたわ。男は慌てて逃げてしまった。私は追いかけて誰が誰だかつきとめようと
思ったけど瀕死のアーサーや意識を失っているミナを残していけないでしょう?
とにかくその後、二人を担架に乗せて、聖マンゴに運び込んで、ダンブルドアに連絡しようと思ったんだけどおっとどっこいーーー
連絡しようにも梟がないのよ。どうしようかと思案した私は病院にかかっていた肖像画の人物に伝言して、このことをダンブルドア
に伝えてくれるよう頼んだわ。運良く、校長室にもその人物を描いた同じ肖像画がかかってるのですぐに伝えると
その肖像画の人物は言ったわ。ここまでがあの事件の真相よ。」
そこまで一気にしゃべってのけるとフェリシティーは溜息とともに、う〜〜んと組み合わせていた両腕を伸ばした。
「でも、何故蛇はアーサーおじさんを襲ったんでしょうね?それからミナ伯母さんはなぜ連れて去られそうに
なったのかしら?」
は人差し指を頬に当てて、考え込んで言った。
「そうねぇーーあたくしにもそこまでよく分からないわ。ねぇ・・・ほんと何故かしら・・・。」
フェリシティーはそこでなぜかギクッとした顔をし、努めて平静さを取り繕うとしていた。
「ああ、そっそれより、自己紹介がまだだったかしら?ーーあたくしはフェリシティー・チェン・
。
あなたの亡くなったお父様の姉です。信じられないかもしれないけど、皆があたくしを死んだと噂してるわねーー
でも、それは全くのデマよ。あたくしは幽霊でもなんでもないわ。ちゃんとこのとおり生きてますからね。」
彼女はサッと巧みに話題をほかの事に逸らしたのだと
はとっさに思った。
「こんにちはーーはじめましてえーと、フェリシティー伯母様とお呼びしてよろしいですか?
やっとお会いできてとても嬉しいです!!私は
・
。ああ、ほんとにお会いできて嬉しいわ!」
それでも
は見事に心からの笑顔を浮かべ、この母方の伯母の命の恩人と抱き合った。
コンコン!
その時ドアがノックされた。
「あらいけない。長居をしすぎたようね。あたくし用事を思い出したわ。じゃあ、落ち着いたら
連絡を頂戴ね?
。ミナによろしくと伝えてね。それじゃあ。」
フェリシティーは至極残念そうに、姪との抱擁を解くとスコットランド風ショールを被って、急いで部屋を横切りドアの取ってを掴んだ。
「失礼」
と彼女は小声で言うと、ノックをした人物の脇をするりとすりぬけた。
「入ってもいいかい?」
とても懐かしい優しい声。
「あ^^先生!!」
くるりと振り返った
はびっくり仰天。
何とそこにはこの一年、会いたい、会いたいとひたすら願ったリーマス・ルーピン元教授。
右手には銀のおおいをしたお盆を、もう片方の手にはバスケットを捧げ持って立っていた。
そうなると
はもういそいそ。
抱きつきたい衝動を抑え、ベッドの横の机に彼が持ってきたお盆を置き、もう一つ、部屋の隅から椅子を持ってきて
彼に薦めた。
「やあ、ありがとう。
!会えて嬉しいよ!ミナが入院したって聞いたので急いで飛んできたんだ。
あ、ミナ姉さんーー目が覚めたようだ。大丈夫?頭痛とかしないかい?さあ、まずは癒者が言ってたけど
患者さんに必要なのは食事だよ。食べて。食べながら話を聞こう。」
ルーピンはベッドからミナを助け起すと、テーブルの上の銀の盆を勧めた。
「ありがとう、ジョン。幸いどこも痛いところはないわ。ああー確かに酷くお腹が空いてるわね・・・。」
ミナはクスりと微笑むと、長い髪を後ろに払いのけ、銀のおおいを取ってナイフとフォークを掴んで食べ始めた。
「
。君にはデザートを持ってきたんだ。お昼食べただろ?ジェニファーさんからことづかってきた。私にこのバスケット
を渡してくれたんだ。」
ルーピンはバスケットから、三個の果汁の滴る美味しそうなラズベリー・タルトを取り出してテーブルの上に置いた。
「え、ジェーンから?で、ジェーンは今どこにいるの?」
はケーキフォークを上手に使い、タルトを半分に切り分けながら聞いた。
「彼女はグリモールド・プレイスにいるよ。昨夜一晩中、ミナに付き添ってて疲れたから寝てるそうだ。」
ルーピンは言った。
は伯母とルーピンに話したいことがごまんとあったが、それは実現しなかった。
ラズベリー・タルトを食べ終えた後、せきを切ったようにどっと戸口から見舞い客が訪れたからだった。
ウィーズリー夫人はミナに「どこも悪いとこはないのね?よかった!!」と声をかけ、抱き合ったし、
ウィーズリー四兄妹もこぞってブラド夫人のベッドに押しかけ、矢継ぎばやにいろいろなことを質問する始末だった。
ハリーも赤毛一家の気迫に圧倒されながら、ブラド夫人に声をかけていた。
そんなこんなでその日は過ぎた。(
は後で、ルーピンと共に、ウィーズリー氏のお見舞いに行った)
ブラド夫人は夕方、癒者の診断で、病院を退院することが出来た。
帰宅したグリモールド・プレイスでは、食卓にジェニファー、シリウスが腕によりをかけて作った
ご馳走が並べられ、シャンパンが何本も抜かれた。ブラド夫人の退院祝いとうわけだ。
ブラド夫人は「そんなことしてもらわなくても・・・それにアーサーがまだ退院してないのに・・そんな・・」
と恥ずかしそうに言ったが、皆、終始ニコニコ顔で騎士団の一員の命が助かったことに感謝し、
彼女にいろんな食べ物を勧めていた。