ね、進路指導どうだった?」

「もめた、もめたー−台風の中心にいるようだったよ。あの婆のおかげでさ。」


「やっぱりね!私の時もそう、マグゴナガルがこうしなさいってアドバイスを出したら

 数秒後にはあの糞忌々しい婆さんが、ああしなさいっていちいち取り消すのよ!

 全く、しまいめには一触即発の危機を感じて、髪の毛が逆立ったぐらい。

 最後は私の堪忍袋の尾が切れてーー雷を落としたけど。」


「へぇ〜やるなぁ。」ハリーはにやにやして言った。

「だいたい進路指導にまで、何の権利があってあの婆はついてくるのかしら?

 おかしいと思わない?自分の将来は自分で決めるわ!いいかげんに黙ってろっていうのに!

 あの忌々しいガマガエルめ!」


は押さえつけた怒りで頬が高潮していた。


「あの婆さんがカエルなら、さしずめ君は黒豹といったところだね。素早く飛びかかって

 こてんぱんに打ちのめす。けっこうなことだよ。ああ、あの女を本当にガマガエルにかえてやれたらな〜」


ハリーはどこか黒い笑みを浮かべながら、面白そうに言った。

「そうしたら、あたしは十秒もたたないうちにあの婆さんの目ん玉をひんむいてやるでしょうね。」

もにやりとして言った。


午後のアンブリッジの授業へ行く途中で、二人は思う存分ガマガエルをこきおろして憂さをはらしまくっていた。



アンブリッジの授業は普段より険悪さが増していた。

怒れる猛牛が鼻息もあらく、教室のど真ん中に突っ立ってマグゴナガルへの呪いの言葉を小声で

吐き散らしていたからだ。


皆は黙って席に着き、できるだけ猛牛と目を合わせないように

教科書に恐ろしく没頭した。



時折、アンブリッジが血走った眼でハリーと を睨みつけた。


二人はぼんやりと防衛術の教科書に身をかがめ、この後の危険な計画に思いを寄せていた。


「銀の盆」でスネイプの最悪の記憶を一部始終、目撃した二人は

どうしてもシリウスとルーピンに直接尋ねたいことがあった。


だが、寮の暖炉は見張られているし、ましてや二人に手紙で問い合わせるなどということは出来ないのだ。

そんな時、最近何の騒ぎも起こせなくて退屈しきっているフレッド&ジョージの黄金コンビが

彼らの悩みを聞きつけ、スッと解決してくれた。


今日の放課後、ひと騒ぎやらかしてアンブリッジを私室からおびき寄せ、

その間にハリー、 達が唯一監視されていない、アンブリッジの部屋の暖炉を使用し、

おのぞみどおりシリウス、ルーピンに連絡を取るという計算だった。



この話を側で聞いてしまったハーマイオニーは、しきりにやめて欲しいと二人に前々から哀願していたのだが、

虎の穴に入り込む覚悟をした二人にこの願いは聞き届けられることはなかった。





二人は「やらないで、お願いだから!」と最後の頼みを叫ぶハーマイオニーに背を向け、


決然とした足取りで、終業ベルが鳴った後の教室を去った。




途端にそれが合図かのように、遠くの方でバーンと派手な音が炸裂し、


生徒の叫び声が悲鳴がここまで聞こえてきた。


「あの性悪なジンジャー(赤毛の蔑称)め!」


アンブリッジがぶつぶつと呟き、全速力で防衛術の教室から、飛び出してきた。

杖を剣のように引き抜き、急いで階段を駆け上っていった。






彼らは敏速でアンブリッジの私室にたどり着き、ハリーは


クリスマスにシリウスから贈られた万能ナイフをドアに差込み、鍵をこじ開けた。


「グリモールド・プレイス十二番地!!」


二人は暖炉の側に置いてあった飛行粉をひっつかみ、ボンと燃え盛る炎の中に放り込んで叫んだ。


二人はぐるぐると炎の中を回転し、膝だけをアンブリッジの部屋に残して目的地にたどりついた。

厨房のテーブルに鳶色の髪の男が腰掛けていた。


「ルーピン先生?」 は嬉しさで喉がはちきれんばかりに鳴った。

「わぁ! 、それにハリーかい??」


ルーピンは急な珍客に、途端に真っ赤になって、椅子から数センチ飛び上がった。

「どうしたんだ?何か問題か?」

彼は最初の驚きを素早く抑え、てきぱきと聞いた。

「ううん、私(僕)、ちょっとシリウスと先生と話がしたいんだけど・・」

「すぐ呼んで来る。」

「お〜いシリウス!早く降りてきてくれ!」



ルーピンが彼を呼んで来て数秒後、二人はシリウス、ルーピンと膝をつきあわせていた。

「何があったんだ?もしかしてあの糞野郎、失礼!スネイプに何かされたのか?」


シリウスは のいぶかしげな視線に気づき、目にかかる長い黒髪を落ち着かなくさわさわと撫で付けていた。


「そうなのか?」

ルーピンも のほうに心配そうな視線をなげかけて言った。

「いや、今回はそのことじゃないんだ。」

ハリーが重い口を開いて、「銀の盆」で見たことの話をしはじめた。


話し終わった後、シリウス、ルーピンの顔が微妙に青くなったことに二人は気づいた。

「二人とも、そこで目撃したことでジェームズを判断しないで欲しい。

 まだ十五だったんだ。」



しばらく経ってからルーピンが静かに告げた。


「僕だって十五だ!」


ハリーが苦しそうに叫んだ。



「いいか、二人とも。ジェームズとスネイプは最初に目を合わせた瞬間から

 互いを忌み嫌っていたんだ。そういうこともあるというのは君らにも分かるだろう?

 人気者でクィディッチが上手かったんだーオール・マイティだったんだよ。

 だが、スネイプは闇の魔術にどっぷりとつかった根暗野郎だった。

 彼とは反対にージェームズはどんな時も闇の魔術を憎んでいた。」



「そうでしょうね・・でも、何故、そうだからといって何もしてないスネイプ先生をいじめたの?

 私のお父さんが助けに行かなかったらー彼にもっと酷いことしてたでしょう?」


「退屈だからってー彼をいじめる理由になるの?シリウス。」


、ハリーは納得できぬと言う顔で大人二人に食ってかかった。


「こいつはー参ったな・・」


シリウスは世界で一番好きな義理の息子と小さな恋人に詰め寄られ、しどろもどろに言った。


「それに先生も何であの時、傍観してたの?

 嫌な顔してたのに止めにいかなかったのはー止めに行ってハリーのお父さんとシリウスとの

 友情を失うのが怖かったから?私のお父さんはそんなこと気にしなかったわ!

 たとえ、友情を失うことになっても、間違っていると思うことには

 剣を抜いて、立ち向かってるわ!!」



はまるで決闘者が、倒した一人の敵から剣を引いて、返す刃でもう一人の

敵に猛然と立ち向かうように、優雅な貴公子に向かって叫んだ。


思いがけない発言に急所を突かれ、シリウスは「何でそんなにスネイプを庇うんだ?」といいたげに

ムッとした顔で彼女を傍観し、ルーピンのほうは困った顔でうつむいて彼女から

視線を逸らしていた。


「ああ、そのことに関しては君のいうとおり何も弁解することはないよ。

 私は確かにあの場にいた中では一番の卑怯者だろう。」

ルーピンはうなだれた。

「ああ、だけど理解してくれないだろうか?ジェームズとシリウスは

 学校中で一番の人気者だった。皆が二人は最高にかっこいいと思っていた。

 二人がー時々、調子に乗りすぎてもね・・」


嬢さんとハリー君の言葉を借りればー僕らが時々

 傲慢な嫌な野郎だったとしてもだろうということだ。」


シリウスは少々皮肉めいて言った。


「父さんはしょっちゅう髪を触っていたね。」

ハリーが疲れたように言った。

「そういう癖があったな。」

シリウスは懐かしそうに微笑んだ。


「あの頃、私たちは皆、馬鹿だったな。まあ、エイミー、ムーニー、デニスは

 それほどじゃなかったが。」


シリウスはそう付け加えて言った。


「馬鹿は私もだよ。パッドフッド。私も同罪だ。

 神よーお許しを。私はスネイプに手を出すななんて一度でも言っていない。

 それに君らのやり方はよくないと忠告する勇気もなかった。」


ルーピンは完全にうなだれており、胸に手を当てて十字を切った。

「まあ、彼はー僕らのやっていることを恥ずかしいことだと

 時々、思わせてくれた。それが大事だった。」

シリウスはしょげきった彼を元気付けるように言った。


。君のお父さんの蹴りが受けられなくなって残念だ。いやぁー実に見事な蹴りだった。

 あいつはーたいした奴だったよ。生涯、私とは敵でいい友達になどなれないがね。

 あいつも私たち、同様カッコイイ奴だった。ホグワーツ在学中に

 Kという偽名でー覆面歌手として活躍してたんだ。覆面歌手とはーラジオだけに自ら

 作詞して歌った音楽を流して公の場にはいっさい出ない、特殊な歌手のことだけどな。

 皆、すごく噂したもんだ。Kは誰だろうってね?

 俺達がーあいつの尻尾をつかんでーまぁ、スネイプの事件の後だけどな。

 あいつは目立つことが嫌いだったからー俺達はあいつを脅して

 「スネイプを庇うのをやめなければKは誰か暴露するぞ」と証拠をちらつかせて言ったんだ。

 その時、あいつは「するなら勝手にしろ。だが、君らの傲慢なやり方には

 僕は我慢できないからな。彼に手出しするなら手加減はしない。」

 ってはっきりと言ったね。あとになって思ったが、真っ正直で男らしい、根がやさしいやつだった。ああ、俺達これじゃまるで悪党だな。

 ますます君のお父さんが光り輝くわけだ。」




シリウスは真実を全部暴露してしまってから、「ああ」とうめいて頭を抱えた。


は前にディアヌ・クラウンの事務所で、フェリシティー伯母から

父親が生前、歌手であったとは聞いていたので別段びっくりはしなかったが、

当時のジェームズ、シリウスの悪行ぶりにほとほとあきれてため息が出る始末だった。



「シリウス、母さんはどうして父さんと結婚したの?

 父さんのことを大嫌いだったくせに!それに母さんは彼女のお父さんの

 ことが好きだったじゃない!」


今度はハリーから質問が飛んだ。


「いいやそれは違う」

シリウスが言った。


「リリーは確かにデニスのことが好きだった。

 でも、エイミーと結婚することが分かって、きっぱりとあきらめてジェームズと付き合い始めたよ。」


ルーピンがすかさず変な誤解を招くことのないように説明した。

「ジェームズの高慢ちきが少し直ってからだ。」

「そして面白半分に呪いをかけるのをやめてからね。」

シリウスとルーピンが言った。


「スネイプ先生にも?」

がギュッと黒い三日月眉を吊り上げて言った。

「あーーースネイプはその、特別だった。

 つまり彼は隙あらばージェームズに呪いをかけようとしたんだ。ジェームズだって

 反撃しないと身がもたないだろう?」


ルーピンがだいぶん険しい表情が緩和してきた を見て微笑んだ。


「母さんはそれを知ってたの?」



「正直言って、リリーはそのことを知らなかったな。

 デニスもだ。あいつは二人の前では猫をかぶってたからな。

 弱弱しいいじめられっ子に見えるようにな。彼らはスネイプの本性を知らなかった。」



二人はようやくしぶしぶながら納得したような顔を見せた。



「そういや 。全部見られた時のスネイプの反応はどうだった?」


罪の意識から徐々に解けてきたルーピンが聞いた。


「物凄く怒ってらっしゃったわ。「出て行け、二度と貴様らの面なんか見たくない!」

 「永久に失せろ」って手がつけられないほどの剣幕でー「もう二度と私たちに特別授業をしない」って

 吐いたわ。」



「あの野郎が何だって?」


シリウスが困惑したように話す に詰め寄った。

「だからー二度と教えないって。」

ハリーが横から言った。

「本当か?それは不味いな。」

ルーピンがチッと舌打ちして事の重大さに眉をひそめた。

「向こうへ行ってーあの野郎と話をつけてくる!あいつめ!なにが教えないだと!ちくしょう!」


シリウスは腕まくりして、ドスドスと足音高く去ろうとした。

「ちょっと待ってくれ!君が行くと今から血の雨を見かねないだろう。

 私が彼に話をつけるからーおとなしくしててくれ。」

ルーピンが冷静にシリウスの腕を掴んでひきとめた。

「二人とも、特にハリー。いいや、そのまえに二人で何とか頼み込んで

 訓練を続けてもらうようにいいなさい!ダンブルドアがこれを聞いたらーー」


ルーピンは熱心に二人に言い寄った。

「そんなこと言えるもんか!スネイプに殺されるよ!!」

「そうよ!あの先生、私を頭からバリバリと食べるわ!!」


ハリー、 は頭をちょん切られた鶏のように慌てまくった。





「ハリー。君が閉心術を続けることは何よりも大切なんだよ!

  。君もだ。あの薬の作り方は絶対にマスターしなけらばならない。

 わかるか?必要なんだ!」

ルーピンは少々、声を荒げて厳しく言った。


「わかった・・わかった・・」

二人はうなだれて言った。




「話してみるよ。だけどそうなったら僕達、鍋でぐつぐつ煮られるのが

 オチだろうな。」


ハリーのこの発言にルーピンとシリウスは思わず噴出しそうになったが、

さすがに二人の前でそれは控えた。















 

 



 

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