「へぇえ・・・チョウ・チャンに告白されたの?」
「あのレイブンクローのシーカーに?」
月曜の夕食時、ハーマイオニーやロンが「ホグズミードで
と二人きりのデートはどうだった?」
聞いてきたのでハリーは、その彼女が伯母の店に行くまでの道中、そして行った後の意外な出来事を話すはめになった。
「で・・何て答えたんだい?」
ロンがこの手の話になるとやけに好奇心をむき出しにして聞いてきた。
「そりゃ・・もち、ノーさ。」
「やっぱり・・そうよね。でもびっくりしたでしょ?」
「ああ・・藪から棒だよ・・参ったなぁ・・彼女にどうしても付き合えないかってせまられて・・ずっと僕のこと好きだったんだって。」
「ヒュー。そいつはすげぇな。
にチョウにこりゃ両手に花だな。」
ロンにからかわれながら、ハリーはぼっぼっと顔から湯気が吹き出るほど、真っ赤になってベイクド・ポテトに手をつけ、
ハーマイオニーは「まあ!」と唖然としてロン、ハリー両名のほうを眺めていた。
ところで噂の張本人の
は、レイブンクロー席にこっそりと紛れ込み、ルーナ・ラブグッドと話し込んでいた。
「明日ぐらいに着くの?」
「うん、最新号はもう刷り上ったんだ。一部を無料でこっちに配布するようにパパに頼んだから。」
周りのレイブンクロー生に聞こえないよう、二人は額を寄せてひそひそと話し合っていた。
「ねえ、何話してたの?」
雑踏に紛れて幾分頬をバラ色に染めながら、グリフィンドール席に戻ってきた
は真っ先にハーマイオニーにつかまった。
「明日になればすぐにわかるわ。」
彼女は酷く嬉しそうな顔で言った。
ロン、ハリーは「はあ?」と言いたげに小首を傾げて、互いの顔を見合わせた。
の謎めいた言葉の意味はその通り、朝食時の時間帯に判明した。
「来た来た来た・・」
はわくわくして天井を旋回して、こちらにやってくる奇妙な梟の群れを見つけてにやりとした。
しばらくするとハリー、
の座っているテーブル脇に梟集団がこぞって降り立ち、塩をひっくり返し、バターをばらまくやら、
現場は一時、騒然とした状態になった。
グリフィンドール生全員はただならぬ事態に、「何事か?」の好奇心まんまんの顔で梟集団をよく見ようと、身をぐぐっと乗り出して見物しはじめた。
「お目当ての物が着たわよ!」
「何が?」
「見れば分かるよ」
は早速、梟集団の羽毛の中に片手を突っ込み、まんまと大き目の茶色い包みをせしめた。
ハリーは「何だろう?」と首を傾げ、彼女がよこした茶色い包みをびりびりと破った。
「ザ・クィブラー最新号。昨日、ルーナに明日着くよって言われたの。」
はにんまりとほくそ笑んで、真新しい紙のにおいのする冊子を取り出した。
ハリー・ポッター、
・
遂に語る.
これは真実 「例のあの人は戻ってきた!」 私達がその人の復活を目撃した夜
「なかなかいい出来でしょう?」
いつの間にかグリフィンドール席にやってきて、
とハーマイオニーの側に座っていたルーナが誇らしげに言った。
ザ・クィブラー最新号は表紙に自分達の写真がでかでかと飾られ、その下に特別インタビューと書かれた大きな複雑な渦巻状の文字が写真を
突っ切っていた。
「きっとこれは読者からの手紙よ。ねえ、二人とも。開けていいかしら?」
ハーマイオニーがてきぱきと聞いた。
「ご自由にどうぞ。」
二人は少し困惑して答えた。
それを合図にロン、ハーマイオニーがいっせいに梟たちがテーブル一杯においていった手紙を開け始めた。
「これは男性からだ。いかれ野郎め。ふざけたホラを吹くんじゃねぇって・・」
ロンが言葉の荒々しさにショックを受けながら言った。
「この女性も駄目だわ。おまえさンたち、聖マンゴで治療を受けたほうがいいさぁ。」
「酷い、ヨークシャーなまりね・・」
ハーマイオニーはあきれ返って、綴りが間違いだらけの手紙を悲しそうに横におきながら言った。
「でも、これは大丈夫だよ!」
ロンは手紙を大げさに振りながら言った。
「あなた達のこと信じますって!」
「こいつはどっちつかず。」
いつの間にかフレッド&ジョージ・ウィーズリーも夢中で開封作業に加わっていた。
「君らはイカレてるーフン、いらないよ!」
ロンはそう言ってくしゃくしゃに丸めた手紙をポーンと後ろに放り投げた。
「こっちの女性はーあなたたちに説得されたって。君達は真の英雄だって思ってるって。
写真同封!ひぇえっ。」
「この騒ぎは何でしょう?」
その声でしーんと辺りが凍りついた。
「ポッター、
、説明願いますよ。どうしてこんなに手紙が来たのでしょう?」
アンブリッジがゆっくりと猫なで声で聞いた。
「おい、今度はこれがいけないのか?手紙を受け取る行為が。」
フレッドがずいと前に進み出て怒った声で言った。
「口の利き方に気をつけないと、また罰則処分にしますよ。」
アンブリッジはさらりと怒りをかわした。
「僕達がインタビューを受けたので皆が手紙をくれたんです。」
ハリーは素早く頭を回転させ、隠しとおせるはずがないと観念して、アンブリッジに告げた。
「インタビュー?何のインタビューです?」
アンブリッジの声が研ぎ澄まされたナイフのように鋭く、甲高く響いた。
「六月に僕達の身に起こったことについてのインタビューです。」
「記者が私達に質問して私達が答えました。これです。お読みになりますか?」
は反抗的な口調でアンブリッジに雑誌を投げつけた。
「あなたたち・・い、いつこれを?」
アンブリッジの声が怒りで震えだした。
「先週末、ホグズミードへ行った時です。先生。」
ハリーがすまして答えた。
「あーなーたーたち、よくも・・どうして・・こんな・・姑息な真似を・・」
アンブリッジは怒った猫のようにくやしそうにうなり声をあげた。
バーバティ、ラベンダーはくすくすとその様子に声を押し殺して笑いこけていた。
「あなたたちに嘘をつかないよう、教え込んだのは全くの無駄でしたのね!!もういい、沢山です。
グリフィンドール五十点減点!あなたたちは一週間の罰則です!」
そうわめきたてると、アンブリッジは「ザ・クィブラー」をしっかりと腕にかかえ、怒り狂い、猛牛のようにどしん、どしんと大広間を突っ切って
退散した。
怒れる猛牛が立ち去ってから、生徒達はひとしきりアンブリッジのさっきの真似をして、大笑いした。
フレッド&ジョージは通路に突っ立ったまま、腹をかかえて笑っていた。
バーバティはクィブラーを読みながら、そのかげでアンブリッジのさっきの真似をしてラベンダーと共に爆笑していた。
笑えなかったのはハリー、
の二人だけだった。
流石に今回は顔が少し青ざめていた。
早速昼前にでかでかと掲示が出て、「高等尋問官令ーザ・クィブラーの所持厳禁。発覚した場合、退学処分に処す」
と書かれてあった。
だが、生徒達は鉄面皮で掲示などおおっぴらに無視して、いけしゃあしゃあと寮の談話室や、トイレなどで
二人のインタビューの内容をしゃべりまくった。
一方、アンブリッジは廊下を歩いて、「雑誌を持ち込んでいないか」とぎょろ目をぎろつかせ、抜き打ちで
生徒のポケットやカバンをチェックした。
だが、悪知恵にかけては生徒達の方が数枚上手で、雑誌を教科書の要約に見えるように魔法をかけたり、辞書や、その他の学用品に変身させて
持ち歩くようにしていた。
まもなく全校生徒全員が雑誌を読んでしまったようだった。
先生たちも教育令二十六号で、インタビューのことを口にするのを禁じられていたが、
それぞれ各先生方は賢明なやり方で、自分達の気持ちを表した。
フリットウィック先生は授業の終わりに、にっこりと微笑んで二人を呼び寄せ「チューチュー鳴く砂糖菓子」をくれた。
トレロー二ー先生は突然、泣き出し、クラス全員がびっくり仰天し、アンブリッジがいや〜な顔をする前で
ハリーは長生きし、魔法大臣に。
は歌手になって大成功するとおおっぴらに宣言した。
一方、あれからマルフォイの
の見る目つきが変わった。
前は心底、彼女に好意を抱いているようだったのに今や、好意がれっきとした憎しみに変わった。
二人が共謀して、自分とその取り巻きの父親をデス・イーターだと名指ししたからだ。
彼は彼女だけでなく、彼女の家族を(特にミナ・ブラド夫人)を憎悪した。
彼女に父親が惚れてしまったため、このところ、嫉妬に狂った母親(ナルシッサ夫人)との喧嘩が絶えなかったからである。
ある日、図書室でハリー、
、ハーマイオニーはばったりとドラコとその取り巻きに出くわした。
マルフォイはクラッブの耳にひそひそとハリーの悪口を吹き込んだ。
それから
の側を通るとき、「覚えてろよ。僕の好意を断るとどういうことになるか」
と憎憎しげな目つきで彼女を睨み、耳元でささやいてその場を立ち去った。
三月、アンブリッジはとうとういろんな理由にかこつけて、トレローニー先生を停職させてしまった。
ダンブルドアのとりなしで、トレローニー先生は停職処分とともに、この城から出て行くことだけは免れた。
占い学はフィレンツェ(ダンブルドアの公認で)が引き続き教えることになった。
そして四月、五年生全員は荒れた。
O・W・L試験が近づいているのだ。
犠牲者の一人、ハッフルパフのアボット・ハンナは授業中、突然、ヒステリーを起こし、医務室に直行となった。
それとは別にDAはついに「守護霊の呪文」を始めた。
皆、これに関しては多大な誤解をしているようで、特に女の子達は可愛い白鳥の守護霊や、カワウソの守護霊を作って
はしゃいでいた。
「とっても可愛いわ!!」チョウが銀色の白鳥の形の守護霊がふわふわと浮かんでいるのを見つめてうっとりとしていた。
「可愛いんじゃ困るのよ・・あなたを守護するんだから・・」
が半ば呆れ顔で説明していた。
「真似妖怪か何かが必要だな。僕らはそうやって習得したんだ。大変なんだよ。
やつがディメンターのふりをしてるうちに守護霊を作りださなきゃ・・」
こっちのはしでハリーは辛抱強く、ラベンダーに説明していた。
「ほんとに素敵ね〜」
ハーマイオニーは自分の守護霊をうっとりと夢見る表情で眺めていた。
「だめだこりゃ・・」
は彼女のまわりで飛び跳ねているカワウソの守護霊を、「あんな吹けば飛ぶようなちっちゃな・・・」
と頭痛がする思いで見つめていた。
その時、大きな音と共に扉が開かれた。
「逃げてください!!ハリー・ポッター様、
・
様!!」
そこには足のつま先からてっぺんまでぶるぶると震えたドビーが、キーキー声をあげて突っ立っていた。
「どうしたの、ドビー?」ハリー、
は彼の側にかがみこんでやさしく聞いた。
「ある方からの伝言です!」
「あの女の人が来ます!」
ドビーは声を震わせた。
「あの女の人って誰?」
ハリーの顔がさっと青ざめた。
「ドローレス・アンブリッジなの?」
の顔もさーっと青ざめた。
「そうです」
しばらくして、ドビーはうめいた。
「はやく、はやくお逃げくださいませ!あの女の人が来ます!!」
ドビーはもう我を忘れてキーキー声でわめいた。
「あの女に捕まってたまるもんですか!!」
ハッと一番に我に返った
が思わず大声を上げた。
みんな、びっくりして彼女の顔を見た。
突発事件に驚いて気が狂ったのではあるまいかと心配したのだ。
「あいつに捕まるなんてゴメンだわ!!早く、どこでもいいから撤収!!!」
は大声でわめいた。
「何を突っ立っているんだ!!逃げろ!!!」
ハリーもドビーと
を見つめて身動きもせずおののいている生徒達に向かって叫んだ。
それから後はもう、大変だった。
押し合い、へし合い、皆出口に突進した。
皆、無言で開け放たれたドアから蜘蛛の子を散らすように廊下を疾走した。
「ハリー、
早く!!」
いもの子を洗うようなごったがえした群れから、ハーマイオニー、ロンが叫んだ。
ハリーはドビーを抱え、
とともに列の最後尾にいた。
ようやく出口にたどりついたハリー、
は外に出、バターンとドアを閉めた。
左右の廊下に目を走らせ、誰もいないことを確かめた。
「君はあっちにー分かれて!!」
ハリーはどーんと
を突き放すと、足早に左の道へと走り去った。
は何も言わずに彼の言葉に従い、闇夜の廊下を疾駆した。
皆、一目散に逃げた後なので誰もいない。
彼女は全速力で廊下を駆け抜け、右の突き当たりに大きな階段と女子トイレを見つけた。
「待ちなさいよ!!」
そこに入ろうとした時、何と、女子トイレからパンジー・パーキンソンのせっぱつまった顔が飛び出してきたのだ。
「あんた・・何でここに?」
はびっくりして叫んだ。
「あんたを引っ張っていけば、スリザリンに大ボーナスだわ!!」
パンジーの目がぎらぎらと輝いた。
「退いてよ、退かないと怪我するよ!!」
はそういい終わる前にサッと杖を振り上げ、素早く呪文を唱えた。
ぶわあっと杖から沢山の色鮮やかな熱帯の蝶が飛び出し、パンジーの視界を覆った。
「いやああ〜ちょっと何これ!?」
廊下一杯にパンジーの悲鳴が響き渡った。
「おい、あっちだ!あっちにいるぞ!!」
廊下の向こう側からスリザリンの誰かの声が響いた。
「や・ば・い〜っ」
は慌てて杖を振って沢山の蝶を消した。
「あ、あそこにいたぞ!!おいお前、動くな!!」
スリザリン生が角を曲がって現れた。
「先生〜!!いました〜ここにいます!!」
モンタギューが声のある限り叫んだ。
絶対絶命だ。
の脇から冷や汗が流れた。
「ペトリフィカス・トタルス!石になれ!!」
その時だ。タイミングよく、スネイプが階段をものすごい勢いで駆け上って現れ、杖を階段の上に立っていたモンタギューに向けた。
「ミス・
。こんなところで何をしてるのかね?」
コロンと転がったモンタギューを脇に蹴って、彼は聞いた。
「な〜んてね。驚かしてごめんなさい。ちょっと変装してただけ。」
途端にあの脂っこい髪がなくなり、赤茶色の髪が現れ、男物の黒いマントに身を包んだフェリシティー伯母が現れた。
「伯母さん!!なんでここへ??」
は嬉しい悲鳴を上げた。
「ダンブルドアにマル秘の報告をしようと来たまでよ。そしたらバッタリ、「奴らを探せ!」ってわめいてるスリザリンの
連中に出会ったわけ。変に思って何をしているのかって聞いたら、「ポッターと
を探しているんです。あいつら
とんでもないことを!」とまんまとしゃべってくれたのよ。よからぬことと思ってあなたたちに警告しようと
思ったらちょうど階段のところでこいつとあなたに出くわしたわけ。」
「パンジーはどこだ?」
「いないぜ」
とほっとしたのも束の間、今度は階段の下からドラコの気取った嫌味な声がした。
「ポッターは捕まえてアンブリッジに引き渡した。」
「ゴイル、お前はあっちを探せ。僕はこの上をいく。パンジーが
と出くわしたら大変なことになる。
それこそ呪いの掛け合いで・・とにかく、僕が を引き取る。お前は他の連中を探せっ」
ボッボッと杖の明りがこちらに刻々と近づいてくる。
「助けて、伯母さん。追われてるの。」
は「何が起こったか詳しく話すから」と約束し、今はもとのスネイプ教授の姿に戻った伯母に抱きついた。
「あいつら、私を捕まえにくるわ。」
「わかった。ほら、あそこの教室に隠れて。」
そういって伯母は近くの誰も使っていない空き教室に
を放り込み、自分も急いで入り込んで鍵をかけた。
「おい、パンジーいるのか?」
ちょうど二人が音もなく、空き教室に入り込んだとき、階段をゆっくりと上がってくる音が聞こえた。
「パンジー!!」
ドラコは悲鳴をあげて、杖を取り落とした。
「誰かいたな。もしかして
か?」
ドラコは脇に空しく転がっているモンタギューと、廊下にバタンと倒れて眠り込んでいるパンジーの姿を発見した。
あの熱帯の蝶の中には眠り薬の成分になる、りんぷんがたっぷりと羽に含まれていたのだ。
「あいつ・・まさか、二人に呪いを・・・」
ドラコはモンタギューとパンジーを見比べて、冷や汗を流した。
「一年のころから恐ろしい奴だと思っていたが」
とドラコは自分がもし、この場にいたらどーなっていただろうと想像してぞっと寒気が走った。
「あっ、とにかくあいつは絶対に僕がつかまえてやるぞ。他の誰にもつかまえさせるものか」
ハッと我に返ったドラコは再び、
を探しに暗闇の中を駆け出していくのだった。