エヴリン・カナハンと・はいとこ同士であったが、
まるで双子のようによく似ていた。
もっとも、は母親ゆずりの黒髪、黒い瞳の持ち主だったが、
エヴリンは栗色の髪、薄茶色の瞳だった。ここだけが二人の違いだった。
遠くから見るとエヴリンの兄のジョナサンでさえ、二人を取り違える程だったが、
カナハン兄妹との一人娘は幼いころからとても仲が良かった。
は二人を特別な友達と考えており、エヴリンの方もにだけ、自分が大きくなったらするエジプトへの冒険を思い描いて見せた。
それから数年後、エヴリンはカイロの古代博物館の司書になっており、は中国へ、ジョナサンもどこか分からないが旅行へ出かけていた。
そして、今日ふらりと帰国したのである。
「エヴリン・・あの万里の長城だってこんな派手な音を立てて崩れないと思うわ」
意気揚々と古代博物館に足を踏み入れたが目にしたものは激しい音を立てて倒壊した本棚と本の山、
そして、呆然と立ち尽くす友人の姿だった
「・・いつ帰ってきたの!?」
「いったい何なんだ、これは!!」
エヴリンが嬉しさと驚きを隠しきれずにに駆け寄ろうとした時、
館長の悲鳴と雷が落ちた。
帰国早々、延々とカイロ古代博物館の倒壊したオーク材の本棚を起こし、床に散らばった膨大な蔵書の整理をやらされたので
とエヴリンはへとへとだった。
唯一、収穫があったのはお気楽な風来坊、ジョナサン・カナハンが持ってきた
掘り出し物だけだった。
「まあ兄さん!死者に対する冒涜もいいとこよ!」
図書室と繋がる資料室の棺の中に潜んでふざけていたジョナサンを助け起こしながら
エヴリンは肝をつぶしそうな勢いで叫んだ。
「ふらりと旅行にばかり行っていたくせに、いきなり現れて今度は私の仕事までだめにする気?」
「お願いだから、館長さんに見つかる前に帰ってちょうだい!」
エヴリンは兄の横に寝ていた女ミイラを元通りに棺の中に押し込み、
腰に手を当てて怒鳴った。
「おいおい、エヴリン、可愛い妹よ、そういう言い方はないだろ?」
ジョナサンは言われた通り、女ミイラの突き出た足を放してやれやれと首を振った。
「僕にもやっと運が向いてきたんだ。やあ、、会えて嬉しいよ。中国旅行は楽しかったかい?」
「ええ、とっても。ちょうどよかった。ジョナサンにも渡す物が。はい、これお土産」
「こりゃあいい・・ありがとう。それに君にも見せたい物があるんだよ」
仲のよいいとこに欲しかった物を貰ってすっかり機嫌がよくなったジョナサンは、
エヴリンの怒りの矛先を見事に交わして一緒に歩き出そうとした。
「もう!を懐柔しないでちょうだい。私、今それどころじゃないのよ。本棚はひっくり返して
莫大な蔵書を彼女に手伝って貰って戻したばっかりだし、それにベイブリッジの奨学金、申請したけどまただめだったの・・」
すかさず、エヴリンがの肩に手を回しているジョナサンを引き離してさっきの続きをまくし立て始めた。
「でも、兄さんがいるだろう?」
あれこれ悩みがつきない妹の話を聞いていたジョナサンは信頼させるように
妹の手を取って一言つぶやいた。
この一言でエヴリンの機嫌はいつも直ってしまうのだった。
「いいから二人とも見てみろよ。今度は本物だぞ」
ジョナサンは二人の女性を手招きして資料室の石棺にもたれかかると、白い上着のポケットから
八角形型のパズルボックスを取り出して見せた。
「兄さん、これ・・どこで?」
エヴリンは早速手に取ってみたが、その瞬間、さっと顔色が変わった。
「テーベの発掘現場で手に入れたんだ」
ジョナサンは得意そうに言った。
「ジョナサン・・やったわ!これはすごい掘り出し物よ!!」
そのパズルボックスは失われた都―ハムナプトラへの道しるべであったのだが、
館長が誤って地図の大部分を燃やしてしまい、エヴリンとジョナサン、はハムナプトラへの道案内人
としてリック・オコンネルという人物を雇うことになったのだった。
リックはカイロ刑務所に三年も服役している人物で絞首刑寸前だったのを
エヴリンとに救われたのだった。
「考えてもムカつくわ。私にあんな破廉恥なキスまでしたのよ。それに彼は汚いし、無礼だし、ごろつきだし・・」
行きかう人々でごったがえするギザの港でトランクを抱えて歩くエヴリンはぷりぷりと怒っていた。
「まあ確かに汚かったけど、根はいい人そうよ」
茶系統の綾織の旅行着をまとい、流行の羽飾りつきの帽子をかぶったはなだめるように言った。
「あなたはキスされてないからそんなこといえるのよ・・」
真っ白なフラノのブラウスにこげ茶色のスカートをまとったエヴリンは納得いかないように言い返した。
「誰が汚いだって、お嬢さん方?」
二人でそんなことを話していると人だかりをぬって大柄な男がひょいと顔をだしてきた。
「ええ、ああ・・あの・・オコンネルさん、こんにちは」
髪をきちんととかし、さっそうとしたいでたちで現れたリックはとてもハンサムでかっこよかった。
エヴリンの頬はほんのりと赤く染まっていた。
「どうも。ところでお嬢さん方は双子か?えーと・・こっちがエヴリン、こっちがだよな?」
リックは目をしばたいて、とてもよく似た女性達を見比べながら
名前と顔を確認した。
「冒険にはうってつけの日だ、オコンネル」
ジョナサンが上機嫌でリックの肩を叩いて乗船を促した。
ハムナプトラ夢ってあまり他のサイトさんで見かけないんですが、勢いに押されて(?)書いてしまいました〜♪
次回あたりアーデス出てくる予定です^^