ハリーがマッチを擦ったので、急に薄暗い室内がパッと明るくなった。

それでもバチルダは彼の顔をじっと凝視したままお礼さえ言う気配がなかった。

ハリーはあきらめた様子で、バチルダから離れると、

奥の粗末な木のテーブルに置かれていた写真立てに見入った。

そこには茶系のコートを纏った金髪の端正な顔立ちの男性が写っていた。

「あの、バチルダさん。ちょっとお聞きしたいのですがこの男の人は

 あなたの息子さんですか?」

写真立ての男性に興味をそそられたハリーは思い切ってこの老婆に尋ねてみた。

だが、バチルダはちょっと写真立てに視線を投げかけただけで、

彼の問いかけに答える様子はなかった。

その代わり、彼女は蝋燭立てを持って二階の粗末な木のきしる階段まで

ついてくるように合図した。

ハーマイオニーは気味悪がって、老婆の後をついていこうとした

ハリーを引きとめようとしたが、何を思ったのかが首を振って

彼を行かせてやるように計らった。

「一緒に来て・・さっきから気になる場所があるの」

ハーマイオニーは不安で今にも胸がつぶれそうな様子だったが、は彼女の手を引き、

淡々と言った。

「ちょっと、どこへ連れていくつもりなの?」

「探して貰いたいものがあるの」

ハーマイオニーはこれ以上薄気味悪いあばら家の階下に下りることを嫌がったが、

は有無を言わせぬ口調で告げた。

は真鍮の鍵がぶら下がっている細長い廊下をしきりにかぎ回り、

ハーマイオニーはおっかなびっくりしながらも、彼女の後を影のごとくついていった。

「思ったとおりだわ」

遂に彼女がぶんぶんと無数のハエがたかる貯蔵室をみつけて呟いた。

「この先にあるかも・・想像以上のものがね」

は酷く鼻をしかめ、杖に明かりを点してそっと貯蔵室の扉を押した。

「ハリー!」

「死体よ!」

数秒後に女の子達の甲高い悲鳴が立て続けに上がった。


















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