達はまた振り出しに戻った。

大蛇をやっつけた後、イングランド北西部のカンブリア山脈湖沼地帯に移動した

ハリーは流氷が張った川で水汲みをしていた。

ハーマイオニーはチェックのキルトスカートにしっかりと包まって

枯れた木の根に腰を下ろして本を読みふけっていた。

「気分は落ち着いた?」

水汲みが終わったハリーにハーマイオニーは問いかけた。

「最高の場所に移動したね」

「ハリーは落ち着いたけどうう・・私は寒くて死にそうよ」

グレーのタートルネックを着たハリー、それに暖かそうな深緑色のボアジャケッ

トを着たがテントの中から這い出してきて口々に言った。

「ここには一度だけパパとママとキャンプに来たの。もう、何年も前のことよ」

「ここは何も変わってないわ。昔も今もね」

「私達の生活は一変してしまったのにね」

「それに、今となっては私の両親はもうここに来たことも覚えてないわ」

「娘の存在すらも何もなかったかのようになってる」

ハーマイオニーが感慨深そうに呟いた。

「私達、三人でずっとここにいない?」

「おばあさんになってしまうまでここで・・」

ハーマイオニーは思ったよりずっと弱気になっていた。

ハリーは深いため息をつき、は涙ぐんだ。

「バチルダの家で見かけた写真の男、ゲラート・グリデンバルトっていうの」

数秒の沈黙の後、ハーマイオニーは先ほどまで熱心に読みふけっていた書物を

二人に手渡した。

「グレゴロビッチの杖を盗んだ男だ」

ハリーが英文で書かれた写真入りページをめくりながら言った。

「それにいつか、ビクトール・クラムがよく思っていなかった闇の魔法使いよ」

も横から覗き込んで言った。

「そういえば僕の杖、どうなった?」

ハリーは大蛇との戦いで落っことしてしまった杖を思い出して聞いた。

「どこなんだ?あの時、回収してくれたんだろう?」

ハリーは今にも泣き出しそうなハーマイオニーに詰問した。

「実は、逃げるとき、私の呪文が跳ね返って――」

「ごめんなさい。と私で必死で直そうとしたんだけど・・」

ハーマイオニーは消え入りそうな声でパッチワークのキルトカバーの鞄から

真っ二つに折れた杖を取り出しながら言った。

「もう終わったことだよ。嘆いたって何にもならない」

ハリーは二人の女の子の謝罪を遮るかのように言った。

「君かの杖を貸してくれ。それに君達はもう中で暖まってくれ。

 見張りは僕がするから」

「ついでにロケットも預かるよ」

ハリーは読んでいた本をパタンと閉じると腰掛けていた木の根元から立ち上がった。

はペガサスの鬣の入った乳白色の杖を黙って彼に差し出した。

ハーマイオニーも首にかけていたロケットを外して彼の手に握らせた。


女の子達が休んでしまうと、

ハリーはテントの前の枯れた針葉樹の木の根元に腰を下ろしていた。

の杖は彼女の人柄同様、暖かみがあったが、やはり、他人の杖なので握ると

妙な違和感があった。

「信じよ・・」

ハリーはキルティングワークのブランケットに包まりながら呪文のごとく唱えた。

いつしか夕闇が迫り、森の大気もぐっと冷え込んだ。

彼は、突如、暖かい光を感じて森の奥を見据えた。

それはガス灯ぐらいの大きさの光で丸く鈍く輝いていた。

しかし、それはただの光ではなかった。

それはエメラルド色の煙のように分散すると、ゆっくりと牡鹿の

守護霊の形を作ったのだった。

「いったい・・」

ハリーはおっかなびっくり、目をしばたいた。



不思議な牝鹿の守護霊に誘われるままついていったハリーは、

そこでついに捜し求めていたものを見つけた。

分厚い氷で覆われた湖の下に眠るがのことく横たわるグリフィンドールの剣。

そう、かつて、の父方の祖母、イルメリン・ミリーツァ・グリフィンドールが

所持していた剣だ。

この肌を突き刺すような時期に寒中水泳をするはめになるとは思わなかったと

ハリーは皮肉っぽく考えた。

だが、アクシオ呪文でも剣が呼び寄せられなかったのだから仕方がない。

身に着けていたものを一枚一枚脱いでしまうと、ハリーは

覚悟を決めて真冬の湖に飛び込んだ。

水は冷たかったが、湖は浅く、剣まであともう少しのところだった。

こんな時に首にかけていたロケットが見えない力でハリーの首を締め上げ始めた。

たちまち、大量の水が口に流れ込み、呼吸が苦しくなった。

呪われたロケットは冷たい水で彼の身体を取り囲み、

さらに深みへと引きずり込もうとしていた。

彼は必死になって、湖上へと浮上しようとしたが、

頭上を分厚い氷が取り囲んでいてぶち破れそうにもうない。

もうだめだ。僕はこのまま死ぬんだ――

その時、派手に頭上の氷をぶち割る音がこだました。

その破壊の衝撃で大量の水泡が彼の身体を包んだ。

このいつも見慣れている派手な破壊の仕方は――ハリーは薄れ行く意識の中で思った。

力強い手が伸びてきてハリーの身体をしっかりと掴んで湖上へと引っ張り上げた。

それからまた派手な飛び込み音がして、誰かが湖水へと潜っていくのが

彼の目の隅に映った。

暖かい湖上へと引き上げられたハリーは激しくむせていた。

?ハーマイオニー?」

ハリーは手探りで湖上へ置き去りにした眼鏡をかけて目をこらした。

すると彼の視界に見慣れた赤毛の男が、アーサー王の湖の貴婦人よろしく、剣を手にした

黒髪の娘を引き上げるのが目に飛び込んできた。

「助けてくれたのは君だったのか?」

「まあね、見れば分かるだろ」

「ただし、氷を派手にぶっ壊したのは僕じゃない。だぜ」

ハリーはずぶぬれになったの側に佇むロン・ウィーズリーの姿を認めて叫んだ。

「眠っていたんだけど変な夢にうなされて・・それで湖にいったらあなたが・・」

は震えてはいたが、しっかりとした声で手に入れたお家に伝わる宝剣を

抱きしめながら言った。

「じゃ、牝鹿の守護霊は二人の仕業じゃないのか?」

「何言ってるんだ?そりゃ君しか作れないはずだろ?」

「僕の守護霊は雄鹿だ。雌の鹿じゃない」

「それに私の守護霊は獅子よ」

手早く衣服を身に着けていくハリーにロンとはわけがわかないという風に言った。

「とにかくロケットの破壊を」

ハリーは冷たい岩の上に呪われたロケットを置きながら言った。

「出来ない。僕はそいつの影響を受けやすいんだ」

ロンは髪から雫がぼたぼたしたり落ちるのも気にせずに引き下がった。

「だからこそやらなきゃ」

ハリーは有無を言わせぬ調子で言った。

「無理なんだよ・・」

ロンはかなり弱気になっていた。

「じゃ、何の為に君はここに戻ってきたんだい?」

ハリーは勇気づけるように囁いた。

「ロン、自信を持って――」

も一歩、彼に歩み寄ると力づけるように言った。

「僕が話しかけたらロケットが開く。それから後は絶対にためらうな」

「邪悪な箱の魂が襲ってくる」

「過去にトムの日記も僕を殺そうとした」

ハリーには一刻の猶予もなかった。

「1、2、3――」

ロンは二人の声に勇気づけられたのだろう。

の手から剣をもらうとそれを頭上高く振り上げた。

ハリーの蛇語に反応して、ロケットがかちりと開いた。

それと同時に、ハリケーン並みの黒煙が彼らを襲った。

はキャッと悲鳴を上げて、枯葉の堆積した地面に倒れ、ハリーも

その近くまで吹っ飛ばされてきた。

「お前の心をみたぞ。俺様のものだ」

「お前の夢を見たぞ。ロナルド・ウィーズリー」

「お前の恐れも見たぞ」

「母はお前より出来のよい娘が欲しかった」

「あの娘達もお前より友人を選んだ」

得体の知れない黒煙の中から心まで凍らせるような恐ろしい声が響いた。

ロンは極度におびえていた。

「ロン、そいつを殺せ!」

「ロン、早く!」

ハリー、の切羽詰った声が極度におびえている彼の耳元に届いた。


ロンが心の闇につけこまれているのをいいことに、黒煙は本物そっくりの

ハリー、、ハーマイオニーの幻を作り出して誘惑し始めた。


「君がいないほうが、うまくいったのに」

本物よりももっと賢そうでハンサムな偽者のハリーが囁いた。

「ハリー・ポッターとたいしたことのないあなたなら誰があなたを

ボーイフレンドに選ぶと思うの?」

「選ばれし者に比べたらあなたはカスだわ」

本物よりももっと賢そうで美しく凄みのある偽者のハーマイオニーが囁いた。

「それにあなたの血って純血のわりに美味しくないの」

「知らなかった?あなたが毎晩寝入った時にお食事をしていたの」

本物よりもこの上なく色白で妖しげな美しさの偽者のが囁いた。

ロンは顔を引きつらせて二人の言葉を聞いていたいたが、

最後の偽者の身も心もとろかすような甘い声には

ぞくぞくさせられてしまった。

「君のママは僕を息子にしたかった」

「あなたなんか何の価値もないわ」

飴と鞭のような言葉の虐待にロンの心は張り裂けそうだった。

「さあ宴を楽しみましょう。私達三人で」

偽者がからからと笑い、真っ先に身を乗り出して

偽者ハリーの首筋を舐めにかかった。

負けじと一糸まとわぬ偽者ハーマイオニーが偽者ハリーに体を押し付けて唇を奪う。

偽者ハーマイオニーの舌が偽者ハリーの口内を這い、偽者と言えば彼の傍らに

跪き、鋭い歯で彼のあそこに触れている。

たちまち、その光景を目撃したロンの中で鋭い怒りが芽生えた。

彼は雄牛のような唸り声を上げて立ち上がると黒煙の中へ

突っ込んでいった。

そして、渾身の力をこめて忌々しい呪いのロケットに剣を振り下ろした。

ハリーとはお互いをきつく抱きしめてその衝撃から身を守った。

「やったぜ」

「ああ、終わった」

「残りはあと三つだけね」

大仕事を成し遂げた三人はぐったりと疲労が襲ってくるのを感じた。











































































































































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