ハリーのすぐ上で何か金色の物が光っていた。彼は瞬きをした。スニッチではない。それは眼鏡だった。

「ハリー、気づいたかね??」彼の上にダンブルドアのにこやかな顔があった。

「先生!クィレルが石を持っています!!あっ先生!まさか は彼女は死んだのですか!?」

ガバッとハリーはベッドの上に起き上がってまくし立てた。

「これこれ落ち着きなさい、ハリー。君は少し時間がずれとるよ。クィレルは石をもっとらん。それに彼女はほれここじゃ。」

校長はそういうとハリーの隣のベッドのカーテンをさっと引いた。

!?」ハリーは目を疑った。彼の目に仰向けに横たわる美しい黒髪に取り囲まれた彼女の顔が目に飛び込んできた。

「しーっ、静かにしなさい。彼女は軽い脳しんとうで気を失っとるだけじゃ。彼女が眠りから覚めるにはもうちっと時間がかかるようじゃの」

そういって校長は茶化し、フッと微笑むと再びカーテンを閉めた。

ここは医務室だ。ハリーと のベッド脇のテーブルには甘い物が山のように積み上げられていた。

ダンブルドアがにっこりと事の顛末を話し始めた。

「地下で君達とクィレル先生との間に起きたことは秘密でな。秘密ということはつまり、学校中が知ってるというわけじゃ。ハリー、君は

 3日間ここにいた。ミスター・ウィ−ズリ−、ミス・グレンジャーは君が気づいたと知ったらほっとするじゃろう。二人共それはそれは心配

 しておった。」

「でも先生、石は・・」

「石は壊してしまった。側にクィレルのローブとターバンだけが落ちていた。ああ・・クィレルを死なせてしまったことがワシの唯一の失態じゃった。」

ダンブルドアはそこで額に手をあて、がっくりと後ろの椅子に沈み込んだ。

「ヴォルデモ―トはそのような男じゃ。自分の部下であった男をこうも簡単に殺してしまう」

「先生、二コラス・フラメルはどうなるんですか。石がなくなったら彼は死んでしまうんじゃ・・」

ハリーが気になったことを尋ねた。

「心配せんでもよい。ニコラスは身辺をきちんと整理するだけの充分な水を蓄えておる。それから彼は死ぬ。つまりじゃ、きちんと整理された心を

 持つ者にとって死は次の大いなる冒険に過ぎないのじゃ。」

ダンブルドアはにこやかに微笑んだ。

「先生、ヴォルデモ―ト、あいつはどうなったんですか??」ハリーが慌てて聞いた。

「ハリー、残念なことじゃがあいつは死ななかった。クィレルを身代わりにし、どこかへ行ってしもうた。誰か乗り移る体を探していることじゃろう。」

ダンブルドアは悔しそうに言った。

「先生、もうひとつお聞きしたいことが・・クィレルは僕を殺そうとした。でも僕に触れなかった。なぜなんですか?」

彼は母親譲り綺麗な緑の目で校長を見つめた。

「愛じゃよ・・」

静かにダンブルドアは語った。

「君の母親は君を守るために死んだ。ヴォルデモートに理解出来ぬことがあるとすればそれは愛じゃ。君の母上の愛は目に見えない程強い力じゃ

 それが君の肌に残っておる。クィレルのように憎しみ、欲望、野望に満ちた者はそれがために君に触れることができんのじゃ。」

ハリーの目から大粒の涙からぽろぽろとこぼれた。

それからハリーは涙をぬぐい校長に次々と質問した。

ダンブルドアは全ての問いに答えてくれた。

スネイプがハリーとを救うため、この一年間全力を尽くしたこと、透明マントの送り主は自分だったこと、

かつてハリーの父親がスネイプの命を救ったことなど・・。

「先生、 は不思議な女の子です。光と影のはざまにいるようなそんな感じがします。ヴォルデモートが言ってました。

 彼女は11年間ルーマニアのトランシルバニアでブラド夫人やその他の吸血鬼に守られて暮らしたと・・。なぜ吸血鬼に守られてたのですか?

 ひょっとして彼女や夫人は吸血鬼なんですか?」

ハリーはここまでくるとそわそわと前髪をなでつけた。聞いてはいけない領域に踏み込んでしまったように感じた。

「もし、そうだったらどうするね?君は彼女や夫人を避けるかね?」

ダンブルドアの目がきらりと光った。

「いいえ!」ハリーは間髪いれずに答えた。

「彼女が吸血鬼やなんであろうと僕の友達であることに関わりありません。これからもずっとです」

「よくいったのう。それでこそ真の友情というものじゃ。ハリーよ、今はその友情が微妙に別の感情に変化しとるようじゃがのう・・」

ここでダンブルドアはハリーの頭をクシャッとなぜた。

ハリーの顔はみるみるうちに真っ赤になった。

「ハーリー?」ここで隣のベッドのカーテンが開いた。

!!」ハリーはびっくりして頭をヘッドボードにぶつけてしまった。

「おお、気づいたかね!」校長が嬉しそうに言った。

「校長先生が助けて下さったんですね!あの時は本当に死ぬかと思いました!」

はぺこりと頭を下げた。

「いやいや 、君達二人は勇気にみちあふれておる。わしがかけつけた時、

すでにヴォルデモートは二人の力に敗北し慌てて逃げていきおった。」

ダンブルドアは実に機嫌よく話してくれた。

「さあ、二人共、もう少し休んだら広間に行きなさい。学年末のパーティを行う。なあにポピーにはちゃんと許可をもらったからのう。」

そういって校長は「まだ二人は休息が足りないんですよ!」といいたげなマダム・ポンフリーに微笑みかけた。





「ハリー、 !!」大広間に行く途中の大階段で二人はハーマイオニ―とロンに出会った。

「もう、この大馬鹿!!ほんっとに心配したのよ!!」

ハーマイオニ―がわんわん泣いて二人を交互に抱きしめた。

「君達は大丈夫なの?」ハリーは横で を抱きしめているロンに聞いた。

「ああ、僕らは大丈夫さ!ハーマイオニ―が僕の意識を回復させてすぐに医務室に連れてってくれたからさ。」

「ロン、ごめんなさい心配かけて!」 が彼に平謝りしていた。

「僕よりもほら彼女、ハーマイオニ―にいえよ。あいつ、死ぬほど心配したんだぜ。」

ロンが真っ赤になって慌てて を引き離しながら言った。

「もういいの。二人共無事だったんでしょ。ほらこんなとこでいつまでも泣いてちゃ、パーティが始まっちゃう。行きましょ。」

ハーマイオニ―は照れくさそうに笑うと のうでをグイと引っ張って大広間に走っていった。

四人が大広間に入っていくと水を打ったようにその場が静まりかえり、その後全員がいっせいにくっちゃべり始めた。


「また、一年が過ぎた!!」

四人が着席した後、ダンブルドアが朗らかに声を張り上げた。

「それではここで寮対抗優勝杯の表彰を行う。四位 グリフィンドール312点、三位 ハッフルパフ352点、

 二位 レイブンクロー426点、そして一位 スリザリン472点」

スリザリン席から嵐のような歓声と足を踏み鳴らす胸糞悪い音が上がった。

「よしよし、スリザリン。よくやった。しかしつい最近の出来事も勘定にいれなくてはならん。」

ダンブルドアがにこやかに微笑んだ。

大広間がシーンと静まり返った。

「これより駆け込みの点数をいくつか与える。ロナルド・ウィ―ズリ―」

ロンの顔がぽっと赤くなった。

「最高のチェスゲームを見せてくれたことをたたえ、グリフィンドールに50点を与えよう」

グリフィンドール席から歓声が上がった。

「次にハーマイオニ―・グレンジャー。冷靜な論理を用いて困難に対処したことを称え、グリフィンドールに50点」

ハーマイオニ―はワッと腕に顔をうずめた。きっとうれし泣きしているのに違いない。

「三番目はハリー・ポッター、そして !!」

「その完璧な精神力と、並外れた勇気を称え、グリフィンドールに120点を与える!!」

耳をつんざく大声音だった。

スリザリンは今や完全にトップから滑り落ちた。

「勇気にもいろいろある」ダンブルドアが微笑んだ。

「敵に立ち向かっていくのにも大いなる勇気がいる。しかし、味方の友人に立ち向かっていくのにも同じくらい勇気が必要じゃ。

 そこでわしはネビル・ロングボトムに10点を与えたい」

大広間に爆発が起こった。

ハリー、ロン、ハーマイオニ―、 は立ち上がって叫び、歓声を上げた。

ネビルは皆に抱きつかれ、人に埋もれて姿が見えなくなった。

スリザリン席ではゴブレッドをテーブルに叩きつけるマルフォイの姿があった。

レイブンクローやハッフルパフもスリザリンがトップから滑り落ちたことを祝って、グリフィンドールに大喝采を浴びせた。

ダンブルドアが手を叩くと広間の飾りつけのスリザリンの緑の垂れ幕がいっせいにグリフィンドールの真紅の垂れ幕に代わった。


グリフィンドール生が頭に被っていた三角帽をいっせいに放り投げた。

かくしてハリー達の一年は過ぎ去った。

そして、待ちに待った試験の結果が返ってきた。

驚いたことにハリーもロンも良い成績で、学年トップはハーマイオニ―と がそれぞれ得意教科で競い合った。

プラットホームに停車していた汽車の汽笛が鳴った。

生徒らがどやどやと汽車に乗り込んでいく。

「家に帰るなんて変な気分ね。」

列車の手すりにぶら下がりながらハーマイオニ―が言った。

「ハリー!」

ハグリッドが手招きしていた。

「ほいこれ、これを作るためにダンブルドア先生が一日休みを下さった。」

彼は驚いた。

それは茶色の革表紙で出来たアルバムでジェームズ、リリー、シリウス、リーマス、ピーター、そして の両親のエイミー、デニス

が彼に向かって嬉しそうに手を振っている。

「ありがとう、ハグリッド。僕、何て言えばいいか分らないよ」

ハリーは涙ぐんだ。

「どーってことねえ、よかったなぁハリー。さあ、もうすぐ発車だ。な、」

ハグリッドはそういうとハリーを汽車に乗せた。

「手紙書くわ」乗車口で待っていた が言った。

「そうだ、三人とも僕んとこ泊まりにきてよ。フクロウ便を送るよ。」とロンが言った。

「ありがとう。僕も楽しみにまっていられるようなものが何かなくちゃ・・」とハリーが言った。

ゴットンと大きく揺れてついに汽車はプラットフォームを離れた。

ハグリッドは汽車がみえなくなるまで見送っていた。










待ちに待った夏期休暇――四人はそれぞれの家で有意義な(一名はそうではなかった)時間をすごしていた。

ここはプリベット通り四番地。ハリーはペチュニア伯母さんにいいつけられた雑用をこなしているところだ。

あいもかわらずハリーの親戚であるこの一家の虐待は収まることを知らず、焦げ付くような太陽が彼の首筋をじりじり焼いた。

彼はガーデン・ペンチのペンキ塗りをしながらロンのこと、ハーマイオニ―のことを思い浮かべた。

そうこうしながらやっと最後の仕事になった。

彼は薔薇の枝を整え、水やりをした。こんな家に咲く薔薇でも眺めているだけで心がなごむのをハリーは感じた。

(真紅の薔薇・・これはブラド夫人にぴったりだ)

ハリーの頭に の美しい伯母の姿が浮かんだ。

(白い薔薇・・これはやっぱり・・)今度は の可愛らしい笑顔が浮かんだ。

(彼女は今ごろ優雅なティー・タイムだろうな。本物のお嬢様は城館で休暇か・・)

頬がほんのりと赤くなり、一人彼はいつまでも物思いにふけっていた。

そして二日後。

バーノン叔父さんの怒り狂う声の中、深夜、ハリーは見事ウィ―ズリ―3兄弟の助けを借りて空飛ぶ車でダーズリ―家脱出に成功した。





ところかわってダイアゴン横丁。

ハリーはウィ―ズリ―家の人々、ハーマイオニ―とウィンドウ・ショッピングをしていた。

「一時間後にフローリシュ・アンド・ブロッツ書店で落ち合いましょう。教科書を買わなくちゃ。」

ウィ―ズリ―夫人がそれぞれの買い物をするためにバラバラになった皆に呼びかけた。

そして1時間後。

「奥様方お静かに願います!!押さないで!!本にお気をつけて!!」

書店は黒山の人だかりで、表では押し合いへし合いしながら入ろうとする人々を書店の店員が大声で注意していた。

「本物の彼に会えるわ!!」ハーマイオニ―が黄色い悲鳴をあげた。

人だかりはほとんどが中年の魔女ばかりだった。

ハリー、ロン、ハーマイオニ―は急いで入り口に置かれた教科書をひっつかみ、ウィ―ズリ―一家が並んでいるところに割り込んだ。

最前列から奇声が上がった。

二階の螺旋階段から忘れな草色のローブをまとった、輝くような笑顔のギルデロイ・ロックハートががゆっくりと降りてきた。

「彼よ、本物の彼だわ・・」ウィ―ズリ―夫人とハーマイオニ―の顔がパアッと輝き夢見るような表情になっている。

ロックハートの周りを日刊預言者新聞のカメラマンがフラッシュをたいていた。



「お集まりの皆さん!!本日は私のサイン会に起こしいただき誠にありがとうございます。」ロックハートがにこやかに挨拶した。

「さて、今日発売になります自伝、私はマジックだ・・おお、もしやそこの君、ハリー・ポッターでは?」

興奮したささやき声があがり、人垣がパッと割れて道を開けた。

ロックハートが列に飛び込み、ハリーの腕をつかみ、正面に引き出した。

「ハリー、にっこり笑って!一緒に写れば、君と私とで一面大見出し記事ですよ!」

ロックハートがハリーと握手しているポーズを写そうとしてカメラマンが何度もシャッターを切った。

「なんと記念すべき瞬間でしょう!おおっともう一つ今日は特別ゲストとしてあるご夫人をお迎えしております。」

ロックハートはそういうと何かを見つけたように人垣に飛び込んだ。

グリーンのドレスをまとった黒髪の若い夫人が正面に引き出された。

「私のご友人であり、また魔法界でもっとも有名な科学者であるミナ・ブラド夫人です!!」

ロックハートは大声で叫んだ。

ミナは顔が真っ赤になり、一刻も早くこの場から逃げ出したいようだった。

しかし彼女の手首をロックハートがしっかりつかんでいるため逃れられない。

客の間からいっせいに大きな拍手が巻き起こった。

「皆さん!彼女の特許、世にも珍しいポリジュース薬(アニメ―ガス・バージョン)がこの度販売されます。

 さあ、あなたも気軽に動物への変身を楽しみましょう!!」


客達はロックハートの見事な宣伝と本物のミナを見れたことに感激し、

さっきよりも大きな拍手を送った。



「さあ、そして」ロックハートはまたも人垣に飛び込み、

「こちらがブラド夫人の姪に当たるかの有名なレディ・ 嬢です!!」そういうと

を引っ張り出した。

!?」ロックハートの横にいたハリーが叫んだ。

「あの人に捕まったら逃げられないのよぉ、面白い人なんだけどね」 が嫌そうにハリーにこっそりと言った。

ったらずるいわ!ロックハートさんと知り合いだったなんて!」向こうの列でハーマイオニ―が口を尖らせていた。

「あれが噂に聞く未亡人の女伯爵か。いやはやこの世のものとは思えないほど美しい・・。」

「父上!?まさか惚れたのですか?」

こちらの列ではルシウス・マルフォイとドラコがひそひそと議論していた。

その後、ロックハートに捕まってしまったミナと 、ハリーは日刊預言者新聞のカメラマンにいろいろな角度から写真を撮られ、なかなか

解放してもらえなかったらしい。



翌日、キングズ・クロス駅の改札口でミナと は慌しく別れを告げた。

はホグワーツに、ミナは商用でロンドンに行くことになっていた。

あと10分、 はポケットの中の懐中時計をチェックし、9と4分の3番線まで急いでカートを押していった。

の目の前で二つのカートがひっくり返った。

「ハリー!ロン!何やってるのよ!!」 はあきれかえって二人の側にカートを押していった。

!!カートがいうことを聞かないんだ!!」ハリーが悲壮な声で叫んだ。

「なにふざけてるのよ!ああ、あと5分しかない!先に行くわよ!」

はそういい終わるか終わらないかで柵に向かって突進した。

のカートが柵にぶつかり、彼女はもんどりうって近くにいたハリーにぶつかり、跳ね飛ばされた。

「痛い・・」

「ひどいよ、 ・・」ハリーが腹のあたりをおさえてうめいた。

「大丈夫かい?」ロンが二人にかけより助け起こした。

の空色のブラウスの袖が汚れていた。

「ハリー、ぼんやりしてないで、ああ、あと1分しかないわ!」 が真っ青な顔で叫んだ。

「ゆっくり行こう!」ロンが叫んだ。

三人は慎重にカートを前進させ柵にくっつけ、全力で押してみた。が、鉄柵は相変わらず固い。

「ダメだ!!」三人は頭を抱えた。

「列車がでちゃったわ!!」 が慌ててポケットの懐中時計を見た。

「行っちゃった・・」ロンが呆然とした。





「どうしよう〜もう次の汽車なんてないのよ!!」 がおろおろと喚いた。

「とりあえず、落ち着いて!ここを出たほうがいいよ。ロン、車のところに行こう。ここは人目につきすぎる・・」

ハリーは 周りをぐるりと見回した。さっきの騒ぎのせいで物見高いマグルがじろじろとこちらを見物していた。

「ハリー、 !!」ロンが目を輝かせた。

「車があるよ!」

「それで学校まで車で飛ぶんだ!」

「でも、それじゃ私達魔法界の法律に違反することになるわ!!」 が慌ててその事実に覆いかぶせるように言った。

「僕たち困ってる。そうだろ?それなら半人前の魔法使いでも、本当に緊急事態だから、魔法を使ってもいいんだよ。

 そう家のパパが言ってた。」

ロンがニヤッと笑った。

「そうと決まれば、善は急げよ!で、車どこにあるの?」 はそういうと素早くカートの向きを替え、下車口に向かって走りだした。

「ロン、これも入れて!!」

「よしきた!お、重いぜ・・・。」

「ロン、ヘドヴィクの籠を貸してくれ!」

ハリー達は車のトランクに次々と荷物を投げ入れている。

「よし、全部入ったな!うわ、 ・・その猫しっかり捕まえててくれ。僕、スキャバーズがいるから」

ロンが運転席に座りこむと、隣にちょこんと座った小さな混血のクリーム色の塊が目に入った。

「失礼ね!この子はネズミ捕らないわよ!!」後部座席に着席した が怒って反論した。

「早く車を出して!今ならだれも見てない!」彼女の隣に座ったハリーが外をちらりと見、叫んだ。



ロンが杖でエンジンをかけ、車は狭い路地から浮き上がり、あっというまに空に向かって急上昇した。

「ウ、ワ、チクショウ!」ロンが透明ブースターを叩いた。

「いかれてるぜ――」ロンはボタンを拳でどんどんと叩いた。車が消えた。と、またぽわーっと現れた。

「つかまってろ!!」ロンはそう叫ぶとアクセルを強く踏んだ。



車はまっすぐに、低くかかった綿雲の中に突っ込んだ。

「さて、どうする?」ハリーが周り中から押し寄せてくる濃い雲の塊を見ながら問いかけた。

「あーあ、すっごい気持ちいいわ。雲の上って」 は窓を少し開け、分厚い雲と心地よい上空の風を楽しんでいた。

、こういうのもまんざら悪くないだろう?」ロンが運転席からメッチャ嬉しそうに言った。

「もう少し下に降りよう。汽車を見つけなきゃ、ロン、急いで!」ハリーが現実的なことに戻って言った。

「よしきた」そういうとロンはいっきに車の高度を下げ、雲の下に降りた。

「見つけた!」ハリーと が同時に叫んだ。

「まっすぐ前方―――あそこだ!」

ホグワーツ・エクスプレスは紅の蛇のように三人の眼下をもうもうと蒸気を上げて走行していた。

「進路は北だ」ロンが計器盤のコンパスで確認した。

「あとは飛行機だけ気にしてりゃいいな」とロンがニヤリと笑った。

思わず、ハリーと は顔を見合わせて笑ってしまった。しばらくの間笑いが止まらなかった。

まるで素晴らしい夢の中に飛び込んだようだった。隣には愛しくてやまない彼女、運転席には無二の親友、そして空飛ぶ車、旅をするには

この方法以外にありえないよとハリーは思った。




突然、エンジンが甲高い音を上げた。

「どうしたの?」後部座席から猫をくすぐっていた が不安そうに声をかけた。

「いや、なんかエンジンがおかしいんだ。」

ロンがもごもごと答えた。

「もうそう遠くはない、頑張ってくれ」

ロンは心配そうに計器盤を叩いた。

「見ろ、ロン!ホグワーツ城だ!」

ハリーが窓から身を乗り出し大声で叫んだ。

湖の向こう、暗い地平線に浮かぶ影は、崖の上にそびえ立つホグワーツ城の大小さまざまな尖塔だ。

ガタガタと車が震え、失速した。

「がんばれ、もうすぐだから・・」

ロンがハンドルを揺すりながらなだめすかした。

だが、次の瞬間エンジンが完全に事切れた。

「ウ、ワ、ダメ!!」一瞬の静けさのあとロンが叫んだ。

車はスピードを上げながらどんどん落ちていった。城の固い壁に向かって。

「止まってくれ!!」車はロンのハンドルさばきでなんとか壁への激突はまぬがれた。

「あの木に気をつけて!!」さっきの落下で自分の方に倒れてきた を支えながらハリーが叫んだ。が、遅すぎた。

車は派手な音を立てて暴れ柳に激突した。

ハリーと は後ろにひっくり返り、ロンはフロントガラスに頭をぶつけた。

「ああ・・なんてこったい・・杖が折れた!」ロンが泣きそうな声で言った。

が「キャッ」と悲鳴を上げた。彼女の顔目掛けて強烈なパンチが飛んできたのだ。



「何が起こったんだ?」ロンが窓から外を覗いた。

「うわっ!?」ハリーの近くに極太の枝が飛んできた。

ねじれた枝のパンチでドアがへこんだ。

「逃げろ!!」ハリーが叫びながらドアにぶつかっていったが、次の瞬間、枝の猛烈なアッパーを食らい、

吹っ飛ばされて のひざに逆戻りしてきた。

とうとう屋根が落ち込んできた。

ロンがうめいた。

急に車のエンジンが元に戻った。

「バックするんだ!」ハリーが命令した。

車は見事に後ろに発進し、木のパンチをかいくぐって地面に不時着した。

そして、問題の車はもう沢山だというばかりに三人と荷物を放り出し、暗闇の中を走り去った。

「おーい、戻って来い!!」ロンが起き上がって叫んだ。

「パパに殺される!!」彼の顔が青ざめていった。

「ヘドヴィーク、待ってくれえ!!」ハリーが空になった鳥かごから命からがら

飛び出たふくろうにむなしく叫んだ。

「こら、逃げるな!!」 がどさくさに紛れて暴れる猫をしっかりと押さえた。




そんなこんなで3人と1匹は城に入った。

「ハリー、見ろよ!組み分け帽子だ。」

ロンの声で二人は明るく輝く窓から大広間を覗き込んだ。

「見て!ジニ―がいるぜ!」

「本当だ!」ハリーが言った。

「ジニ―って?」 が首をかしげた。

「僕の妹さ!」ロンが答えた。

ダンブルドアは組み分けを教職員席のテーブルから眺めていた。

ハグリッドはゴブレッドでグビグビと酒を飲んでいた。

「あっ、ロックハート教授!」 が淡い水色のローブを見つけた。

「なあ、君ロックハートと知り合いなんだよね?書店で僕ら見てたんだけど・・・」ロンが聞いた。

「違うわ、あの書店で会ったのが初めてよ!伯母さんはずいぶん前から付き合いがあったようだけど」

は慌ててその事実を取り消した。

「ちょっと待って・・教職員テーブルの席が一つ開いている。スネイプは?」

ハリーが二人に囁いた。

「もしかして病気じゃないのか!?」ロンが嬉しそうに言った。

「もしかしたら辞めたかもしれない!だって、またしても「闇の魔術に対する防衛術」の席を逃したからね!」

ハリーが言った。

「まあ、確かにあの人気作家が席をさらっちゃったからねぇ。」

は苦笑した。

「もしかしたら」三人の背後でひどく冷たい声がした。

「その人は君たち三人が汽車に乗っていなかった理由をお伺いしようとお待ち申し上げているのかもしれませんな」

が「キャッ」と悲鳴を上げた。他の二人はその場で固まった。

「ミス・ 、今しがたあげた悲鳴はなんだね?」

スネイプの顔にさっと青筋が走った。

「ついてこい」スネイプが言った。




「入りたまえ!」三人は地下牢教室に通された。

「なるほど」スネイプは猫なで声を出した。

「有名なポッター、 とそのご学友ウィ―ズリ―はあの汽車ではご不満だった。

ドーンとご到着になりたい。3人さん、それがお望みだったわけか。」

「違います!先生!駅の柵のせいで!」ハリーと が同時に弁解しようと口を開いた。

「黙れ!」スネイプは冷たく言った。

「お前たちは見られていた」スネイプは新聞を取り出し見出しを読み上げた。

「空飛ぶフォード、いぶかるマグル」

「まことに残念至極だが、お前達は我輩の寮でないからして、処分は我輩の決定するところでない。

これからそのことを決定する人物を連れて差し上げよう。」

そういうとスネイプはさっと身を翻し、 にちらっと気がかりな視線を投げかけて出て行った。

十分後、スネイプはマグゴナガルとダンブルドアを連れて戻ってきた。

三人は必死に自らの身に降りかかった災難の状況を説明した。

ダンブルドアは三人の話を聞き、退校処分は今日ではない、しかし、君たちのやったことの重大さについてははっきりと三人に言っておく、

今晩三人の家族に手紙を書くと告げた。

マグゴナガルは最後に厳しい顔で「三人共、罰則を受けることになりますよ」と釘をさした。

スネイプは思い切り苦虫をかみつぶした顔をし、ダンブルドアにせかされ、さっさと出て行った。









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