「何だって?」

甲高い二つの悲鳴を聞いてしまったハリーはぎょっとして後ろを振り返った。

次の瞬間、彼は驚愕のあまり背後の鏡台にぶつかった。

何とそこにはあるはずの老婆の姿がなく、老婆が羽織っていた擦り切れた

ショールの中から代わりにむくむくと大蛇が起き上がってきたからである。

彼は内心、冷や汗を流しがらも近くに置かれていた粗末な木の椅子をつかんで応戦した。

一方、階下ではガラス張りの貯蔵室の天上に吹き上がった返り血と幾つかの肉片を

はっきりと目撃してしまったハーマイオニーとが彼を助けに行こうと

駆け出そうとしていた。

「あっ!」

より先に駆け出そうとしたハーマイオニーが足元にうず高く積まれていた

古本の山につまずいて転んだ。

その横をが野生の狐のように身を翻して駆けていった。

、待って!」

階下ではあはあ言いながらハーマイオニーがようやく起き上がるのがの視界の

隅に映った。




その頃、ロンドン郊外のお屋敷ではリーマス・ルーピンが

綺麗なバラが生けられた陶磁器の花瓶を前にマホガニーのテーブルで

一人スコッチをあおっていた。

彼はお世辞にも気持ちよく酔っているとは言いがたく、

一口飲む度にその液体の苦さに顔をしかめていた。

「まだ起きてたの?」

彼が頭を抱えてため息をついた時、奥の部屋のドアがそっと押されてサテンのガウンを

羽織ったフェリシティーが出てきた。

彼女は酒に溺れる彼の背中を腕組みしながら見つめていたが、テーブルまで

つかつかと歩いていくと自分もその苦い液体を喉に流し込んだ。

「起こしたかい?任務で疲れてるんだろう?寝なよ」

リーマスは自分に負けないほど大きなため息をついたこの婦人を気遣って言った。

フェリシティーはそれには答えずに、彼の目の前に椅子を引いて座った。

「また飲んでるのね?」

が今にも帰ってくることを夢見て」

フェリシティーの突き刺すような視線にリーマスはスコッチをあおるのをやめた。

「悪いか?」

「いいえ」

リーマスは皮肉っぽく微笑んでフェリシティーに向き直った。

「私達の結婚は他の世間なみの夫婦とはとても違うようだ」

「夫婦や恋人が一緒に過ごすはずのクリスマスイヴに妻は友人達とほっつき歩き、

 夫は妻がどこにいったのか、また、いつ帰ってくることさえ知らされていない」

「リーマス、そんなふうに言うもんじゃないわ。やめなさい」

お酒の力を借りて毒づきまくる彼にフェリシティーは見ていられなくなってたしなめた。

「いつも私は蚊帳の外だ。妻を守るのは夫ではなくそのご友人達だ」

「リーマス、飲みすぎだわ。やめなさい」

「やめろ?いったい何が言いたいんだ?」

彼はちょっとの間、正気が戻ったらしく、射るような目でフェリシティーを睨みつけた。

「最後に寝たのがいつかも思い出せない妻のことで君にとやかく言われたくない!

 なあ、本当はがどこにいるのか居場所を突き止めてるんだろ?」

「知らないわ。本当に何も」

「嘘をつくな!どいつもこいつも私に隠し事をしていったい何が楽しいんだ?」

リーマスは目の前に置かれたスコッチの瓶を素手で払いのけると、ばっと立ち上がって

フェリシティーに詰め寄った。

「分かったわ」

「だけど今のそんな姿をに見せたいの?」

「彼女は待っててとあなたに手紙を残したんじゃないの?」

「本当に彼女を愛してるなら信じて待ってあげて」


フェリシティーは狼男の本性をわずかに垣間見せたリーマスに

あきらめきったように言い放った。



































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