その夜、三人は闇にまぎれてヨークシャー地方のマグルが経営する病院内に

うまく潜り込んだ。

ハリーは具合の悪いを抱き上げて車椅子に下ろしてやり、

ハーマイオニーは近くのガラスタイルの案内板に目をこらして

内科、眼科、耳鼻科、放射線科、処置室と読み取っていき、

血液庫と書かれたところで目を止めていた。

「必要なものが置いてある部屋は分かったわ」

「よし、僕が取ってくるよ」

「いいえ、ハリー。あなたはここでの側にいてあげて」

「病院内は私のほうが詳しいわ。待っててね、すぐに取りにいってくるから」

ハーマイオニーは青白くやつれきったの腕に軽く手を置くと、安心させるように

微笑んで駆け出そうとした。

「気をつけて。私のために無理しないでね」

はとっさに彼女の腕をつかんで呟いた。

ハーマイオニーは心配無用とふっと笑うと今度こそ本当に駆けていった。



お目当ての階にたどり着くとハーマイオニーは、クリーム色のドアを次々と開けて

夜の閑散とした病院内を歩き回った。

しかし、関係者用入り口のドアは鍵がかけられているのも多く、ハーマイオニーはしばら

くドアをガチャガチャ動かしていたが、やむなく杖を取り出してこじあけるはめになった。

ようやく「血液庫――Blood Bank」のネームプレートが書かれた部屋に立ったのはいいが、

オートロック式のドアの前で地団太踏んだ。

そんな時、彼女はクリーム色のドアの向こうから一人の看護婦が歩いてくるのが

見えたので慌ててほの暗い隅へと隠れた。

ほの暗い隅にハーマイオニーが潜んでいるのに気づかずに看護婦はポケットからIDカー

ドをドアのスリットに差し込んで開錠した。

ハーマイオニーが壁の向こうに隠れて様子を伺っていると、

看護婦は輸血用の血液が一杯に詰まれたカートを押して歩いてきた。

ハーマイオニーはぎゅっと目を瞑った。

やるなら今しかない。

次の瞬間、ハーマイオニーの無言の失神呪文が当たって、看護婦がくずれ落ちた。

「ごめんなさい、本当にごめんなさい・・」

物陰から走り出たハーマイオニーは心の中で何度も被害者に謝りながら、

ブルーのボックスから幾つかの輸血用パックを取り出してデニムジャケット

の内側にしまいこんでいた。



「お待たせ、取ってきたわ!」

院内の階段を軽やかに駆け下りてハーマイオニーはとハリーの下へ戻ってきた。

「こんなに!?」

は目を真ん丸く見開いた。

「予備用。これだけあれば当分は持つでしょ?」

の手に輸血パックをしっかりと握らせながら、ハーマイオニーは嬉しそうに言った。

「でも、これだけの血液がごっそりと消えたらやばくないかな?」

ハリーが眉を寄せて言った。

「しばらくはジェミニオ―そっくり呪文で騙せるわ。の為じゃない!」

さすがのハーマイオニーはずらかる時にちゃっかりと防衛工作を施していたのである。


「二人とも、すぐにここを出たほうがいいわ」

は耳をそばだてて、ずいぶん遠くの廊下からこちらに向かってくる

複数の足音を嗅ぎつけた。

「何で?何か聞こえるの?」

ハリーは彼女の側にかがみこんで尋ねた。

「聞こえないの?たぶん(私達の所業が)ばれたんだと思う」

は不安そうに蛍光灯が照らす青白い天井を仰ぎ見て呟いた。

「早く行こう」

ハリーには彼女の言うところの遠くからの複数の足音が聞こえなかったが、

彼女の優れた聴力に信頼を置いていたので、ハーマイオニーに目配せすると車椅子の

ハンドルに手をかけた。

ハリーはを乗せた車椅子を力の限り押して走った。

ハーマイオニーも杖をかまえ、後ろや前に目を配りながら、

非常用出入り口まで走った。


結局、三人はまたもや闇に紛れて病院から姿を消し、安全な場所で野宿していた。

は先ほどの騒ぎせいか、しんどそうにベットでうずくまっていた。

つかつかとブーツの靴音がしたかと思うと、仕切られたキャンバス地を撥ね上げて

ハーマイオニーがベッドへと近づいてきた。

「はい、これ飲んで」

は貧血のせいで顔をしかめると、ストローを挿した紙コップを受け取った。

「もうっ、元気出して。中身はこーれーよ!」

ハーマイオニーは空いた手で空っぽの輸血パックを振って見せた。

は中身が分かった途端に、腹を空かせた狼の子のように紙コップに飛びついた。

彼女はそのまま貪るように紙コップの中身を飲み干した。

「美味しい?」

「ええ、ああ・・やっと生き返った気分だわ」

容器の中身を舐めるように飲み干してしまうと、は感謝の目で

ハーマイオニーを見上げた。


そのまま女の子達は静かに座って食事をした。

病院から逃げる途中で、ハーマイオニーはハリーが貸してくれた透明マントに隠れて

スーパーマーケットに立ち寄っていた。

は口直しにお茶を飲み直し、フォークでカップヌードルの麺をすすっていた。

ハーマイオニーはボローニャ風スパゲッティにフォークを巻きつけているところだった。

女の子達はデザートの缶詰の梨とみかんで満腹になり、別の部屋にいるハリーも

ハーマイオニーが調達してきてくれたことでいつになく豊かな食事を終えていた。





























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