サヤは今、生クリームを塗ったばかりのケーキに新鮮なホイップクリームを

絞ってデコレーションしようとしていた。

「おおっ、こりゃうまそうっ!」

「頂きま〜す!」

部屋中にたちこめていた美味しそうな匂いをかぎつけてどかどかと

男性陣がやってきた。

「だめっ、これはギンガットの分なんだから!」

サヤはホイップクリームを指でなめとろうとしたヒカルの手を

はたいて宣言した。

「心配しなくても皆さんの分もちゃんとありますよ。上手く出来てるか分からないけど・・」

しょぼんとした男性陣ににっこりとした笑顔とともに声をかけたのはだった。

「うわっ、レアチーズケーキだ!」

途端にヒカルが円形テーブルの隅に走り、柳模様のお皿に置かれていた

クリーム色の泡のようにふんわりとしたレアチーズケーキの一片をつかんで

口の中に放り込んだ。

「美味いっ、これ、マジで美味しいよ!」

ヒカルは感激して叫んだ。

「ほんとか?」

「どれどれ」

「俺も味見させてくれ」

ヒカルの声に他の男性陣がワーッと手を伸ばしたので、ケーキは跡形もなくなくなってしまった。

「うん、確かに美味い。銀河の森を思い出す味だ」

「兄さん、甘いもの好きだからのケーキ食べさせてあげたかったな・・」

「どうやったらこんなに美味く作れるんだ?教えてくれ!」

ハヤテ、リョウマ、ゴウキがを取り囲んで褒めちぎっているのを

サヤはちょっぴり複雑な思いで眺めるのであった。



「ギンガットがいなくなった?」

「あのピンクの猫ちゃんのこと?」

それから数時間後、知恵の木モークからの連絡を受けてサヤ、達はギンガットの住む森を探索しているところだった。

サヤが子猫の鳴き声がしたので音源を辿ってみると、霧の立ち込める深い森の中を何かを抱えて走っていく女の子の姿があった。

モークが言うには何らかの影響で聖なる力が一時的に機能しなくなっているらしい。

サヤや達がどうすべきか悩んでいると「キャーッ!」と幼い少女の悲鳴があがった。

皆、一目散に木々の間をぬって駆け出した。

急流な川の側で少女がカマキリ男に追い詰められている。

サヤは木製のスリングを取り出すと、カマキリ男目掛けて撃った。

弾はカマキリ男の左肩に当り、驚いたカマキリ男は勢いよく吹っ飛んだ。

「猫ちゃん!」

「これは・・」

、サヤはみゃあみゃあ泣くピンク色の毛並みの猫を抱く少女を見て驚いた。

「サヤ、、その子を頼む!」

リョウマはそう命じると、銀河の腕輪を前に突き出し、あっという間に戦闘衣に変化した。


ログハウスでは、何らかの影響で可愛らしい子猫の姿になってしまったギンガットに

少女が暖かいミルクを与えていた。


「私の名前は。あのね、お嬢ちゃん。酷なこというようだけどその猫、このお姉ちゃんのものなの。返してやってくれないかしら?」

は単刀直入に切り出した。

だが、子供は子猫を奪い返されまいと警戒して、ミルクを飲み終わったギンガットをぎゅっと抱きしめた。

「そんな言い方じゃだめだよ、。私の名前はサヤ。ごめんね、いきなりびっくりするようなこと言って。

 でもちょっと聞いていいかな?その猫はあの森で拾ったの?」

「ううん・・裕子とこの子はずっと一緒にここで暮らしてるの」

子供は頭をぶんぶんふって頑なに否定するばかりだ。

「でも、その子、お姉ちゃんのいなくなったギンガットによく似てるの」

サヤは熱心に言った。

「ギンガットはお姉ちゃんの大切な仲間なの・・」

その様子を見ていたは「じゃ、私は外に出てるわね」と一言だけ言い残して静かにドアを閉めて出て行った。


「説得はだめだったらしいわよ」

複雑な思いで、ログハウスのドアを開けて出てきたサヤの代わりには説明してやった。

カマキリ男をやっつけてここまでやってきた男達は、サヤやの説明に顔を曇らせた。

どうしてもその少女がギンガットを手放さないらしいのだ。

「どっちにしろ、ギンガットがサヤの元に帰らない限り、海賊とは戦えないぞ」

ハヤテは厳しい表情で告げた。

「でも・・」

だが、心優しいサヤにはあの寂しがりやの少女からせっかくの友達を

取り上げるわけにはいかなかった。

「あの子は私を怖がってるようだし、今無理に引き離すのは誘拐するのと一緒みたいね」

ハヤテはをちらと見たが、彼女からはお手上げのジェスチャーが返ってくるばかりだった。

「そういうことなら仕方ないな・・サヤ、それにも念のため、あの子の側にいてあげるんだ。いつまた

 海賊が襲ってくるかもしれないからな」

リョウマが決断を下したとき、銀河の腕輪にモークからの連絡が入った。

また市街地でカマキリ男が暴れているというのだ。

「さっきはきつい言い方してごめんなさい。私、ちょっと冷たい性格だから・・」

「いいよ、もう気にしてない。よかったらお姉ちゃんもここに座って。」

「ありがと。お嬢ちゃんはいい子ね」

「大丈夫よ、もう悪い奴らは来ないから」

「今頃、このお姉ちゃんの仲間がボコボコにしてるもの」

サヤと二人で、長椅子の真ん中に少女とギンガットを挟んだは何だか

心に暖かいものがわきあがってくるのを感じていた。

ギンガットが突然、少女の腕の中で低くうなった。

突如、ペチカに似たタイル張りの暖炉にオートバイが突っ込んだのだ。

現れたのは黒い革ジャンに赤いヘルメットをしたサンバッシュだった。

「ハロー、可愛い子ちゃん達。残念ながら、悪い奴らっていうのはそう簡単にやられないもんさ」

彼はあきらかにレンガの壁の向こうから、三人の話を盗み聞きしていたようだった。

サヤとは反射的に少女を後ろに隠した。

サヤは得意げに登場して気を抜いていたサンバッシュに身体ごとぶつかっていくと、横に吹っ飛ばした。

その隙には少女の肩を抱くと走り出した。

冬枯れた木がからまりあう森の中を走っていく三人の行く手を阻むのは水兵達だ。

サヤは「こっちへ!」とに合図して違う道へとそれた。

しかし、そこには先回りしたサンバッシュ本人が待ち受けていた。

「逃がしゃしないぜ、ベイビー」

サヤはから少女を受け取ると堆積した枯葉を強く蹴って、高い樹の上に飛び上がった。

そして、野生のツタをつかむと飛び移った。

「くそっ、追え!」

サンバッシュは予想外の展開に驚いて叫んだ。

も慌てて走り出したサンバッシュを密かに追うことにした。


「どこに隠れた?可愛い子ちゃんよ!おとなしく出てきな!」

ログハウスが立ち並ぶのどかな田舎の光景にサンバッシュの怒声が響く。

、どこ行っちゃたのよ?仕方ない。ギンガット、裕子ちゃんを守ってあげて」

ログハウスの死角に潜んでいたサヤは今は子猫でたいした力もない聖獣に

幼い少女の運命をを託すと、勇ましく空中で宙返りしてサンバッシュの前に現れた。

どうやらサンバッシュが狙っているのは少女ではなく、子猫の首にかかっている赤い隕石

のペンダントらしかった。

「お姉ちゃん!どこ行ってたの!?」

「静かに!」

足音一つ立てずに、少女とギンガットの背後に忍び寄った氷の精は

少女の口に指をあてがって声を出さないよう命じた。

「さあ、おとなしく隕石を渡せ!」

サンバッシュの声が危険な雰囲気を帯びている。

「あんた達には何も渡さない!」

サヤは負けじと言い返し、銀河の腕輪を前に突き出して戦闘衣に変化した。

「また、いきがっちゃって・・渡しちゃいなさいよ。こんなもの・・」

その様子を見ていた氷の精はがっくりと額に手をやり、サヤの正義感っぷりにため息をつくのだった。

「たくっ・・どこまでもしょうがない無鉄砲なお嬢さんね。でも、それがあなたの長所なんだから・・」

氷の精は黒のサッシュベルトに手をやった。

そこには銀のちっちゃな鎖とともに氷の短剣がぶらさがっていた。

「精霊転生!!」

彼女は氷の短剣を逆手に構えると呪文を唱えた。

途端に彼女の雪の衣装の上に銀の鎖帷子のベストが現れ、黒のマントがふわりと全身を覆った。

戦闘衣に変化したサヤは四方八方から襲いかかる水兵を、飛ぶように走り回って

切捨てていき、サンバッシュにも立ち向かっていったが、彼の素早い射撃をよけ切れず

弾を腹部に食らってしまった。

サヤは地面を引っかいて、猫拳で再起を図ったが、再びサンバッシュの銃口が火を噴いた。

だが、氷の精の放った氷柱の長剣がすっと飛んできてカキーンと彼の弾丸をはじき返した。

「姉ちゃん、またあんたかよ!」

サンバッシュは跳ね返った弾丸を受けて、よろよろと立ち上がりながら悪態をついた。

「この間はよくも俺の弾丸を全部跳ね返してくれたな。」

「姉ちゃんよ、この礼はたっぷりしてやるぜ!」

サンバッシュの銃口が再び火を噴いた。

氷の精は堆積した落ち葉の中を転がって弾丸を避け、地面を蹴ってジャンプすると、

銃弾の届きにくい高い木の枝へと逃げた。

「くそっ、ちょこまか動くんじゃねえ!!」

硝煙の鼻のつく匂い、響き渡る銃声、彼女は木々から木々を飛び回ってサンバッシュの銃弾から逃げた。

派手な爆発音が響き渡った。

油断していたサヤに向けてくるりと後ろを振り返ったサンバッシュが、銃撃し、

彼女がもんどりうって転んだのだ。

「出て来い、氷の精の姉ちゃんよ!出てこなきゃ、あんたのお仲間の息の根を止めるぜ!」

サンバッシュは堆積した枯葉にうずもれたサヤの首根っこをつかんで、銃口を顔面につきつけて怒鳴り散らした。

「よし、姉ちゃんよ、まずは武器を捨てな」

隠れていた広葉樹の枝からばさりと飛び降りた氷の精に、サンバッシュは残酷な条件をつきつけた。

「捨てろと言ってるんだよ。おい、姉ちゃんよ、本当にお仲間が死んでもいいのか?」

、何やってるのよ!?私に構わず早くこいつを!!」

「姉ちゃん、俺は気が短いんだ。早くしな!」

そのやりとりを見ていた少女はついに走り出した。

そして、子猫の首にかけていた赤い隕石をサンバッシュめがけて投げつけた。

彼がサヤの首根っこをつかんでいた手を離し、意気揚々と隕石をキャッチしようと

飛び上がった時、サヤは寝転がった状態のまま、弓を引いた。

矢は真っ直ぐに隕石めがけて飛んでいき、石は彼の手に渡る前に粉々に砕け散った。








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