「ああ、なんてこと・・来たわ!白い魔女よ!」
「走って!」
「逃げろ!」
ぺペンシー四兄妹たちと赤い魔女が和やかに歩みを
進めていたその時だった。
ビーバー夫人がそりの音と白鹿の匂いをかぎつけて
悲鳴をあげた。
長男のピーターは、魔女のそりが目と鼻の先まで
せまってくるのに気づき、やばそうな顔をして兄妹たちに
早口で命じた。
「ルーシーを私によこして!」
幼い妹の手を引いて足手まといになりながらも、出来るだけ足を早く動かして走るピーターの横に寄り添うと
は大声で叫んだ。
「!?飛んでるのか!?えっ・・なんだって!?」
「ルーシーは私が抱えて飛んだほうが早いわ!」
「わかった!」
透き通るような四枚の薄い羽を備えて氷上を滑空する彼女に
ピーターはおっかなびっくりしたが、すぐに何をすべきか悟って妹を彼女の手に預けた。
「行くわよ、しっかりつかまって!」
「わあっ!?」
半ばもぎとるようにルーシーの上半身をよいしょっとかかえあげると、彼女は
一気にスピードを上げて氷上を滑空した。
そりをぐるりと取り巻くやかましい銀の鈴の音はもう真近にせまっている。
ぺペンシー兄妹とはほうほうのていで、ビーバー夫妻が
森で偶然見つけた大木の割れ目に飛び込んだ。