「これはこれは若き女王陛下、殿!」

「まさか、女王じきじきにおでましになるとは光栄ですな」

「ごきげんよう、ミラース卿」

「今日の御前試合、私達二国間の約束に二言はありませんわね?」

「もちろん。ただ、あなたの代理の騎士殿が勝てばのお話だ」

左右に二人の騎士を従えたの姿を見とめたミラースは、

先ほどまでの歪んだ笑みを消し、打って変わって友好的な態度で迎えた。

だが、両者とも顔にはにこやかな笑みをたたえていたが、どこまでも冷たく

儀礼的に振舞うのを忘れなかった。

「あまりご無理をなさらないで」

「ミラースは依然油断ならぬ男です」

は髪に結んでいた暗緑色のリボンをピーター王の腕に

お守りとして結びつけながら囁いた。

彼は「あなたこそ敵の動きに気をつけられるよう」と彼女に頷いてみせると

エドマンド王から銀の盾と長剣を受け取った。

ピーター王が長剣を高く掲げるとナルニアの住民から大歓声が沸き起こった。

「私が生き残ってもあまり失望するなよ」

一方のミラースはソベスピアン卿から金の甲冑を受け取り、出陣の準備を整えていた。

周囲の軍人達は彼の洒落たジョークに思わず笑ったが、グローゼル将軍だけは

「本当にこれでよいものか」と良心の呵責に苛まれていた。


大理石の柱に囲まれた神殿跡で両者は向かい合った。

「よいのか?お前達の女王と国を救いたければ降伏しろ。まだ間に合うぞ」

「勝手にしろ。今更耳は貸さない」

「神聖な玉座と愚かな女王一人の為にあと何人死ねばよいものを・・」

「ナルニアの神聖な玉座は女王ただ一人のもの。死ぬのはお前だ」


なおも降伏をすすめるミラースに、ピーターはきっぱりと釘を刺した。

その言葉が引き金となり、両者は同時に長剣を振り上げて突っ込んでいった。

その頃、柊の枝が絡みあってできたトンネルを馬で駆け抜ける者がいた。

スーザン女王である。

その後ろにはルーシー女王も相乗りしていた。

「あいつらに見つかっちゃたわ!」

幼きルーシー女王は裏手の林を駆け抜ける無数の蹄の音を聞きつけて悲鳴を上げた。

スーザン女王はくるりと後ろを振り返ると追っての数をざっと目算した。

やがて木々が絡み合っていない場所まで来ると、スーザン女王は馬から飛び降りた。

「手綱をしっかり握って」

「何をする気なの?」

「悪いわね、ルーシー。ここからは一人で行って」

「あいつらを食い止めるわ」

スーザン女王は妹に安心させるように微笑んで見せると、思いっきり馬の尻を叩いて

駆けださせた。

様。先ほどから不穏な動きが・・」

「分かりました。あなたは下がって」

女官である木の精、ドリュアドから耳打ちされたは、熱狂する群集の中へ

うまい具合に紛れ込んで姿を消した。


スーザン女王は覚悟を決めてきゅっと唇を結ぶと、しょっていた矢筒に手をかけた。

木々の間からさんさんと差し込む日の光を受けて、彼女は軍人達を待ち受けた。

一頭、二頭、三頭――長剣を振り上げたテルマールの軍人達を全て捉えると、

真っ赤な矢を長弓に番えた。

ひゅんという音ともに第一番目の矢が放たれた。

見事、先頭の馬に矢が命中し、軍人は悲鳴と共に振り落とされた。

彼女は眉一つ動かさずにすかさず第二番目の矢を放った。

それは風を切り、次に向かってきた軍人の首もとに命中した。

彼はうっと低くうめくと絶命した。

第三番目の矢はボーガンを携えた軍人の左胸に命中した。

彼は悲鳴を上げて絶命した。


しかし、森の地形を利用してやってきた最後の軍人にはその快弓は

遅れた。

スーザン女王は彼女の矢を避けるかのように木々の間をぬって現れた

軍人の長剣の二振りを避けるはめになった。

スーザンは倒れた樫の木の根元まで走っていくと、体勢を立て直そうとした。

しかし、そこで思ってもみなかった味方が乱入した。

試合会場から早馬を飛ばしてきた女王である。

ドリュアドに留守を任せた彼女は、今まさに長剣を構えて

スーザンを突き刺そうとしていた軍人目掛け、自ら乗っていた馬から

飛びかかったのだ。

彼女に掴みかかられた軍人に動揺した馬はいななき、前足を高く掲げたので

二人は馬から振り落とされた。

そして、地面をごろごろと転げ落ちる二人をよそに、さらに馬で乗りつけたカスピアン王

子が通りかかり、このどさくさに紛れて闇討ちしようとしていた

もう一人の軍人を叩き切ってしまった。

「カスピアン!!」

スーザン女王が二人の味方にびっくりするやら嬉しいやらをよそに

ミラースの仕掛けた卑劣な罠に怒り狂ったは、「この卑怯者!」と

呟いて立ち上がり、重い鎧のせいで立ち上がるのが遅れた軍人の頬を黄金の錫杖で

殴りつけた。

女王、なぜここに?」

「御前試合の会場にいたのでは?」

スーザン女王と甘い笑みを浮かべあっていたカスピアンは急に

真顔になり、軍人をノックアウトしたに問いかけた。

「私の女官であるドリュアドが知らせてくれました。卑劣な罠が仕掛けられていると」

「なら早く戻らねば。ミラースや側近達に(あなたがいないことを)

 気づかれるとまずいことになる」

「助けてくれてありがとう。ルーシーはもう大丈夫だと思いますわ」

「礼には及びません。行きましょう」


カスピアンはスーザン女王を持馬に相乗りさせ、も踵で馬のわき腹を

軽く蹴ると駆け出させた。


































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