まず、一足お先に城の塔に乗り込んでいたエドマンドが照らす懐中電灯の
灯りを目当てにカスピアンが長剣を振り上げて切りかかった。
空からの攻撃を予想だにしてなかった塔を巡回していた見張りの兵は
あっけなくやられ、塔の上から転落した。
グリフォンに掴まった六人はそのまま上空をを滑空し、スーザンが
エドマンドが照らす懐中電灯の光に疑念を抱いた兵士を弓で射殺し、
ピーターがグリフォンから飛び降りて、早速異変に気づいた兵士と
長剣で渡り合った。
一方その頃、城内ではリーピチープ率いる小さな騎士が排水溝をつたって潜入し、ササッと
格子戸の間をすり抜けていった。
体格の優れたミノタウロスとニカブリクも城内へとっくに潜入しており、夜警の兵士を
暗闇に紛れて闇討ちしていた。
見張りの兵を無事やっつけたカスピアンとピーターは塔の一角からロープを垂らし、唯一の内通者である
コルネリウス博士の部屋の窓を叩いた。
何度叩いても返事がないので不審に思って、カスピアンが窓の掛け金を外して
そっと侵入すると中はもぬけの殻であった。
部屋の書き物机の上には難しそうな蔵書が乱雑に積まれてあり、愛用の金縁眼鏡がぽつんと取り残されているのが分かった。
「何かあったんだわ・・」
はぐるりと薄暗い部屋の中を見渡すと嫌な予感がして呟いた。
「博士を探す」
カスピアンは即答した。
「時間がない。開門が先だ」
ピーターはその案に賛成できずに唸った。
「博士がくれた角笛で我々は出会えた」
「彼は王子以外で唯一の信頼出来る人よ。お願い、助けてあげて」
カスピアンの物憂げな声に、はピーターの服の袖を掴んで懇願した。
ピーターは困ったように彼女のすみれ色の瞳を覗き込み、助けを求めるように
妹を見やった。
「ミラースは私達が引き付ける」
スーザンはこれまたカスピアンの熱心な視線を受けて即答した。
「門は必ず開ける」
二人の女の子達を味方につけたカスピアンは力強く言った。