今日も猫丸はのんびりと国道沿いを走行していた。

本日の猫丸の運転責任者はセイカイで、その後ろでは鶴姫、、サスケ、サイゾウ、

ジライヤ達がのんびりとトランプの勝負に明け暮れていた。

「ああ、また負けた〜!何で皆そんなに強いのよ〜!?」

はくやしそうにカードを握り締めて叫んだ。

「お前、ジャンケンとこれにかけてはめちゃくちゃ弱いよな」

バスの後部座席から、そんな彼女をにやにやしながらからかうのはサスケだ。

「いっててて・・」

突如、急ブレーキが踏まれ、セイカイの苦しそうなうめき声が車内に響いた。

「どうしたの、セイカイ、お腹痛いの!?」

鶴姫は心配でたまらない様子で運転席に手をかけて覗き込んだ。

「こいつ、朝から食い意地張っちゃってさ、何食べたと思う?肉まんでしょ、サンドイッチでしょ、

 せんべいにポテトチップスまで食べたんだぜ!」

すかさずサイゾウが失笑しながら、セイカイの腹痛の原因について真相を

ぶちまけはじめた。

「それにジュースとアイスクリームも。お腹イタイ当然ネ」

ジライヤももう一言付け加えると、向かいのサイゾウからカードを一枚抜き取った。

「え〜っ!?どこをどうやったらそんなに食べられるのよ!いつか胃が再起不能になるんじゃない?」

はもう救いようがないと、ほとほとあきれ果てて叫んだ。

「頼む、早く、病院、病院連れてって、死ぬ〜!!」

後には冷や汗と真っ青な顔をした今にも吐きそうなセイカイの

大絶叫がこだました。

胡散臭い病院に連れてこられたセイカイの腹痛の原因は食あたりで、見るからにも藪医者な

男は彼を診察するから外に出てなさいと、付き添いでやってきた鶴姫を追い出した。

しかし、この後、彼はこの藪医者に手術台で殺されかけそうになって

ほうほうのていで逃げ出したのだった。

なんとこの藪医者の正体は、妖怪、毛羽毛現で先ほども憎き忍びの衆の一人、セイカイ

だと分かっていて彼を殺そうとしたのだった。

この毛羽毛現もしょせん、忍びの衆の敵ではなく、あっさりと倒されてしまうのだが。


一方、天狗、金霊、毛羽毛現に続く敗北の辛酸をなめた敵陣営では

大魔王の息子が「打倒忍びの衆」のスローガンをかかげて強敵を送り込もうとしていた。

彼は黒いヘビメタ風革ジャンに身を包んだ妖怪界のプリンスで、今日も豪快にエレキギターを

かき鳴らし、演奏が一段落すると、ひゅっと短く口笛を吹いて忠実な配下を呼び寄せた。

「お呼びでございますか?」

可愛らしい声とともに霧の向こうから駆けてきたのは、灰色の忍び装束に身を包んだ五人のくノ一だった。

「アヤメ、サクラ、スイレン、ユリ、ラン」

大魔王の息子が一人、一人その名を呼ぶと、彼女らは誇らしげに頭(こうべ)を上げていった。

「お前達の他に、酒天童子の兄弟が忍び六人衆を倒すと誓いを立てた」

彼はぐるりと彼女らを一瞥すると今回の計画について語り始めた。

「お前達の仕事は奴らを迷いの森に送り出すこと。そこで奴らを一気に葬り去るのよ!!」

「分かったわね?」




「甘いわね、がしゃ髑髏様」

「何ですって?」

大魔王の息子がむっとして言い返した時、夜霧の中からスマートな羊皮のベスト、乗馬用ズボン、丈の長い革ブーツをまとい、乗馬用鞭を

手にした背の高い女が現れた。

長く艶やかなこげ茶色の髪が印象的なこの女、何を隠そうあの忍び六人衆の一人、の実の母親である。



「何故、あなたが最前線に出て奴らを始末しないのですか?」

「あなた一人なら簡単に奴らを始末出来るはずよ」

女は一定の距離を保ちながら、彼を挑発するかのように喋った。

「あの乱暴者の力だけが取柄のでかぶつでは猿飛、霧隠、三好、児雷也、鶴姫、の子孫を倒すには役不足。

 きっと足をすくわれるわ。たとえ、サポートにそこの猫どもを付け足してもね」

ここで女は黒い乗馬用鞭で、五人の可愛らしい忍び達を指差して断言した。

「貴様、言わせておけば!」

大魔王の息子その人をも恐れない侮辱的な発言にかっとなったサクラは背中に

立てかけていた忍刀を抜いて切りかかろうとした。

「お黙り、このこざかしい猫どもめ!」

だが、女はひゅっと黒い鞭で空を切り、それを階段に叩きつけて脅した。

「これが怖いか、猫どもめ。しょせん、お前達は獣。獣はいつの時代も鞭と火を恐れるからな・・」

女は「キャッ!」と悲鳴を上げて座り込んだサクラや他の娘達をあざ笑うかのように

鞭を頭の上で振り回した。

「調子に乗るな、ミラ。私の猫達を傷つけたら承知しないわよ!!」

貴公子ジュニアは両目をぎろりと光らせて彼女に警告した。

「あら、あなたの大切な猫を傷つけたことなんて一度もないわ。獣は本能的に鞭と火を恐れるものよ」

だが、女はそれにひるむことなくのんびりと喋った。

「生意気な女め、ヌエがどうしてお前を買いかぶっているのか理解出来ん」

「ところでの始末は私にお任せ頂けるのでしょうね?」

「フン、母親であるお前が出る幕じゃないわ。いいから引っ込んでるのね!!」

得意げに乗馬用鞭をたずさえて、彼の側に形だけひざまずく女にジュニアは苦々しげに吐き捨てた。


「いい考えですわ、ジュニア様。私達もこの女が実の娘相手にどこまでやれるか見たいですもの」

先ほど大好きなご主人様の前で大恥をかかされたサクラが、切り裂くような笑みを浮かべて言った。

「そうですわ。この女が大口ばかり叩く馬鹿かどうか見極めるいい機会ですもの」

「是非、この女にも同行をお許し下さいな」

ランやアヤメと呼ばれる女も次々に賛成し、可愛くて忠実な部下達にせがまれては、さすがの冷酷な彼も折れるより仕方ない。

「分かったわ、お前達がそこまでいうならいいでしょう。おい!そこの忌々しい女、分かったら、さっさと行くのね!」

彼は水色の派手なエレキギターで、の母親をびしっと指すと大声で喚いた。

「ありがとうございます、ジュニア様」

女は満足げに微笑み、失礼千万なお辞儀を返すと、いつ果てるとも知れない夜霧の中へ消えていった。




そんなこととは露知らずに、達は急な山道を猫丸に揺られながらのんびりと妖怪退治の旅を続けていた。

「近頃、さっぱり妖怪でないよね?

車窓の外は木ばかりで、何も見るものがなくて退屈していたサイゾウが、鶴姫の向かいにいた彼女に話を振ってきた。

「そうだけど・・油断は禁物よ、サイゾウ」

一人、タロット占いに熱中していたは「鎌をたずさえた死神のカード」を引いてしまった

ことに懸念を隠せないようだった。

「おおっ、相変わらず手厳しいねぇ・・なあ、もっと気を楽に持てよ。そんなんじゃこの先疲れるぜ。

 大丈夫だって。きっと妖怪の奴、俺達が怖くて出てこれないんだぜ!」

大胆不敵な笑みを浮かべてガハハと高笑いするサスケにつられて、鶴姫達も

きゃはははと大はしゃぎして笑い出した。

だが、彼らはこの時すでに敵の罠にはまっていることを知らなかったのだ。


ブナやトチやシイやクヌギの木々に囲まれた山々はうっそうとしていて

貴公子ジュニアの部下達が潜むのにはうってつけだった。

彼女達は音を立てないように山道を走るバスを削り取られた斜面から眺め、

「海沢行き」と書いてある標識の向きを妖術で変えた。

そして、猫丸をただっぴろい山の中腹に誘い込んだ。

「あっれえ?」

今回の運転責任者のセイカイは真っ先にバスから飛び降りて首をかしげた。

「冗談じゃねえぜ。お前、道間違えたろ?まったく・・」

腰に手を当ててえらそうにいうのはサスケだ。

「そんなことないよ。俺、標識どおりに走ったんだからさあ・・」

セイカイはわけがわからないというふうにつぶやいた。

「何だか薄気味悪いところ・・」

「真昼間から幽霊でもでそう・・」

サイゾウ、は身震いしながら言った。

「とにかく日暮れ前には街に・・」

鶴姫がその言葉を言い終わらないうちに、クヌギの林をぬって、大量の白煙がこちらに向かって降りてきた。

サスケ達はその白煙を盛大にかぶってしまい、慌てて衣服についたその粉を払った。

粉の正体は鶴姫がなめてみたところ、マタタビで、猫族である猫丸はその

魅惑的な香りに誘われてファンファンとエンジン音を鳴らしながらどこかへ行ってしまった。


「こいつは罠に違いない。誰かが俺達をこの森の中に誘い込もうとしてるんだ」

熱血漢だが、割と冷静なサスケは猫丸を追いかけようとした仲間を制して言った。

「あれが猿飛の子孫。なかなかいいところに目をつけたようだね・・」

「あの男が、現在の忍び六人衆の実質的なリーダーか」

「でも、これからが本番よ。相当苦しいことになるだろうね。ましてや生きてこの森を出られるか否か・・」

アヤメ、ユリとともにクヌギの木の陰に潜んだの母親はにやりとほくそ笑み、

連れの彼女達に頷いてみせた。

彼女達が両手を組み合わせて妖術を称えるとそこから「迷いの霧」が発生した。

迷いの霧は真っ直ぐにサスケ達に襲いかかり、たちまち互いの名前を呼び合う

六人をばらばらにしてしまった。

「鶴姫!」「サスケ!」

「サイゾウ!」「!」

「セイカイ!」「ジライヤ!」

六人の声がやまびこのようにこだましては、かき消されてしまった頃、げほげほ謎の煙にむせながらサスケ、ジライヤ、

ようやく目を開けて辺りを伺った。

「しまった!はめられたんたんだわ!」

の顔がさーっと青ざめいく。

「鶴姫!」

「サイゾウ!」

「セイカイ!」

その場に残された三人ははじかれたように走り出した。はぐれた他の三人を見つけ出す為に。


ジュニアは色んな意味で印象深いです。ドロドロといいなんか憎めませんよねこの人達(笑)妙に人間臭いというか。
さてどうなるか次回・・。









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