その後、印籠で連絡のついた鶴姫とジライヤを呼び寄せたサスケとは
納屋に干してあるきのこを入念に調べてみたが、とりたててこれといった異常は見られなかった。
ただ、実際に毒見をしたジライヤが錯乱してサスケに殴りかかったことで
事態は急転した。
サスケは和尚になりすました天邪鬼が茸を自ら栽培し、村の人に
食べさせておかしくしたのだと解釈し、それを耳に挟んだコスケはショックで
石段を駆け下りて走った。
一方、連絡の取れないサイゾウ、セイカイを探していた
は沢で七輪で茸を焼く和尚と、それをご馳走になっている最中の二人を
見つけていた。
がさがさと茂みをかきわけて二人に呼びかけようとした時、コスケが
こけつまろびつ石段を駆け下りてきて喚いた。
「だめだ、その茸を食っちゃだめだ!!」
小僧っ子は決死の覚悟で、和尚目掛けて河原に落ちていた小石を投げつけて妨害した。
「こいつの正体は天邪鬼だ!」
小僧っ子が叫んだとき、正体を暴露された和尚はバッと着ていた袈裟を脱ぎ、
次の瞬間、恐ろしい形相の天邪鬼の姿に早代わりした。
「俺の正体をよくも見破ったな・・」
「俺を自由にしてくれたお前にだけは手を出さないでおいたものを」
計画を台無しにされた天邪鬼はずんずん歩いてくると、小僧っ子の襟首をつかんで締め上げようとした。
「痛ぇっ、誰だ?」
だが、次の瞬間、クヌギの木の影から放たれた手裏剣が天邪鬼の右腕に
突き刺さって蛮行を防いでくれた。
「やめなさい!毘沙門天の鉾を退けてくれたその子を殺すことはないでしょう!」
編み笠を目深に被り、茶摘娘の姿に扮装したは小僧っ子を後ろ手に庇うと
真っ向から天邪鬼に立ち向かった。
「女、邪魔立てすると痛い目に会うぞ!」
天邪鬼は編み笠を目深にかぶった茶摘娘がだと気づいておらず、脅すように言った。