どこまで行けども行く手を阻む迷いの森。二人の行く手に立ち込めるのは死という闇だけ。

今、サスケとは互いの肩に腕を回して支えあいながら、うっそうとした常緑樹の森をさ迷っていた。

突然、彼が左足を押さえてうずくまった。

「どうしたの?あっ!これ酷く出血してるじゃない・・」

は心配そうに患部を見て呟いた。

「何でもねえよ・・」

だが、強がって見せた彼はさらに左足を押さえてうずくまった。

彼の左足は丈夫な忍び装束の一端が破け、そこから鮮やかな赤い血が流れ出ていた。

「何でもなくないでしょう?」

の呼吸は乱れていたが、黒く艶やかなポニーテールを縛っていたモスグリーンのハンカチを解くと、

負傷して動きにくそうな彼に黙って手渡してやった。

「これで傷口を縛って」

「でもこれはお前の・・」

サスケは断ろうとしてはっと自分の足元を見た。たちまち彼の表情に戦慄が走った。

そこには今まで自分が歩いてきた道のりどおりに血が転々とこびりついていた。

も鞭や刀により怪我をしていたが、内出血が大半だったので、落下する血糊がサスケより少なくてすんだのだ。

「きっとくノ一達はこれを辿って・・」

自らの怪我を改めて確かめたもようやくその事実に気づき、思わずぞっとした。

「追っ手が来る。近いみたいだ」

彼はさっと地面に身を伏せ、こちらに駆けてくる軽やかな女達の足音を聞き取っていた。

二人は傷ついた足をできるだけ早く動かして走り出した。

途中でくノ一達のしつこい目をくらます為に、共に堆積した枯葉の奥深くに隠れたりしたが。

「もう行ったと思う?」

彼の忍び装束の一端を握り締めながらは不安そうに尋ねた。

「ああ」

彼は短く答え、彼女の手を取るとまた走り出した。

クヌギの木が生い茂る場所に猫丸はむなしくつながれていた。

そして、その前には簾のかかったバラックが建っていた。

彼と彼女はクヌギの木の影に走りこみ、くノ一達がさっさっさっとバラック内に入るのを見届けた。

上機嫌で簾をはねあげて出てきたドロドロの監視の目をかいくぐり、二人はバラックの裏手に素早く回りこんだ。

「何?二人を見失っただと?」

酒天童子の兄弟の話し声が聞こえる。

「そんなに心配することないわ。二人とも深手だし、この森を出ることは不可能よ」

生意気そうなユリの声だ。

「森から出ようとすれば私達のかけた妖術が働き、永久にこの森を抜けられない」

サクラが得意そうに言った。

「とにかく、サスケとを見つけ出すのよ」

め、しぶといところはあの女にそっくりだわ」

「ジュニア様が今こちらに向かわれてる。急ぐのよ」

と対峙したことを思い出したサクラは、むしゃくしゃして仲間にきつく命じた。

サスケはあいからわず傷がうずくらしい。

それはも同じだった。

それから二人は隙を見て、猫丸のドアを開けて中に滑り込んだ。

サスケは救急箱を探して開けた。

取り出したのは消毒液と包帯。

「お前はここで待ってろ」

「その怪我でどこに行くの?」

「今動くのは一人のほうが目立たない。それに何かあれば、お前が打って出て、奇襲攻撃を仕掛けることもできる」

「俺が出て行ったら、このドアをロックしとくんだ。誰が来ても絶対に開けるなよ」

「俺の仲間は絶対に助ける。約束だ」

サスケはの肩を抱き、少し微笑んでから出て行った。

はぼんやりと猫丸の冷たい床に足を投げ出した。

彼のことだから何か考えあってのことだろう。

今はとにかく彼が戻るのを信じよう。

それにこちらでも何かプランを考えておかねば。

はそう強く思うことにした。

「奇襲攻撃か・・」



サスケは傷ついた足でトタンの壁をよじ登り、室内に通じる換気口に潜入した。

そして、ちょうど仲間が縛られて転がされてるあたりに消毒液を流し込み、簡易鋸で穴を開けて

針のような穴からたこ糸を使って、簡易鋸を真下にいる鶴姫めがけてするすると下ろしていった。

そして、気を失っている鶴姫の頭をそれで軽く突っついた。

彼女はちくりとした痛みに気づき、黙って、両隣で気を失っている

サイゾウ、セイカイに体ごとぶつかって衝撃を与えて起こした。

足元で転がっていたジライヤに対しては、彼の頭を足で軽く蹴って起こした。

酒天童子は相変わらずドロドロに酌をさせていて彼らの微妙な動きには気づいていない。

鶴姫は、ひそかに天井のサスケから受け取った簡易鋸を動かしてロープを切ることにした。


再び、くノ一組が探索から戻るとサスケの高笑いがやまびこのように響き渡った。

彼女らはたちまち混乱に陥った。

サスケの声が聞こえたとかでドロドロや酒天童子の兄弟もぞろぞろと外に出てきた。

「しまった、うつせみの術だわ!」

サクラが気づいた時は遅かった。

おまけに猫丸から真っ白な煙幕が発射され、一箇所に集まっていた彼らは一様にむせ返った。

が彼を待っている間に、猫丸のリモコンボタンを操作して吹きかけたのだ。

「一足遅かったな!」

これはたまらないと真っ白な煙幕を必死に払いのけて走り出たくノ一、酒天童子達は

トタンのバラック小屋の急な階段にずらりと並んだ五人を見て絶句した。

そこにはサスケを筆頭に、無事、簡易鋸でロープを断ち切って脱出した四人が並んでいた。







テレワークならECナビ Yahoo 楽天 LINEがデータ消費ゼロで月額500円〜!
無料ホームページ 無料のクレジットカード 海外格安航空券 海外旅行保険が無料! 海外ホテル